2020 Fiscal Year Annual Research Report
ニトロ基およびアゾ基の還元反応によるナイトレンの発生を鍵とする新反応の開発
Project/Area Number |
20J13697
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
細谷 広務 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ニトロ基 / 還元反応 / ジボロン化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族ニトロ化合物の還元反応は、有機合成上有用なアニリン誘導体などの含窒素化合物を合成する重要な反応であり、現在に至るまで継続的に研究されている。しかしながら、従来のニトロ基の還元は、過酷な反応条件により行われてきたため、得られる目的物がアニリン誘導体にのみ制限されてしまうといった課題があった。このような背景のもと私は、4,4’-ビピリジンとビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン (B2nep2) との反応により生じる N,N’-ビス[(ビス(ネオペンチルグリコラト)ボリル)]-4,4’-ビピリジニリデン 1 を還元剤として 2-フェニルニトロベンゼンに対して作用させたところ、機能性有機材料の基本骨格であるカルバゾールが生成することを見出した。この反応は単環からなる芳香族ニトロ化合物の還元的脱酸素化反応における機構解析の結果から予測していた通り、芳香族ニトロ化合物に対してジボロン化合物を用いた還元反応では中間体としてナイトレン種が発生していることから、オルト位の芳香環の分子内環化反応により進行したと考えられる。続いて開発した反応系を用いて、さらなる変換反応を模索したところ、アセトフェノン存在下で、芳香族ニトロ化合物に対し、触媒量の 4,4’-ビピリジンと B2nep2 を作用したところ、ケチミン誘導体が得られることを明らかにした。本反応は、芳香族ニトロ化合物上に電子求引性基・供与性基を有していても良好に反応が進行し、ケチミン誘導体を与えることが明らかとなった。本研究成果により、有機物である4,4’-ビピリジンと有機ホウ素化合物である B2nep2 を組み合わせることで、芳香族ニトロ化合物からカルバゾールやケチミン誘導体といった有機合成反応へと展開することが可能な方法の開発を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点において、芳香族ニトロ化合物の脱酸素的還元反応は達成しており、本手法を用いてさらなる有機合成化学への応用を企図して研究開発を進めた。その結果、研究実績の概要で記載した通り、ニトロ基のアミノ基以外の変換反応を開発することができたので、このような区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでジボロン化合物がニトロ基の還元反応に適していることを見出している。そこで、今後ジボロン化合物の新たな反応性の模索として、金属化合物の還元反応に応用できるか検討する計画である。一般的に、金属化合物の還元反応はアルカリ金属など取り扱いが難しい金属還元剤を用いた還元反応が主であるため、取り扱いが容易な有機化合物で金属化合物の還元反応を達成することができれば、低原子価の金属化合物の新たな合成経路を確立することができるためである。
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