2020 Fiscal Year Annual Research Report
筋幹細胞分泌因子Sema3Aによる筋線維型制御機構の食品機能学的調節
Project/Area Number |
20J13712
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松吉 祐児 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋幹細胞 / 衛星細胞 / Sema3A / 筋線維型 / 食品機能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sema3A依存的な遅筋型筋線維制御機構を食品機能学的に制御することを可能とするため、筋衛星細胞への添加実験を行っている。事前に行った研究から、リンゴポリフェノールが遅筋型筋線維を誘導することが明らかとなっており、その機能を担う単一ポリフェノール成分としてクロロゲン酸を同定した。筋衛星細胞へのクロロゲン酸の添加はSema3Aに依存的なシグナリング軸(Sema3A→myogenin/MEF2D→遅筋型myosin)のmRNA発現量を上昇させ、遅筋型myosinのタンパク質発現を促進した。 以上の結果からクロロゲン酸がSema3A依存的な遅筋型筋線維形成機構を活性化させることが明らかとなったが、その経路は不明である。クロロゲン酸はSema3A細胞膜受容体のアゴニストになっているのではないかという仮説のもと研究を行っているが、クロロゲン酸の添加によりSema3AのmRNAも有意に上昇していたため、クロロゲン酸がSema3Aを介してシグナリングを活性化させていることが考えられた。そこで筋衛星細胞特異的にSema3Aを欠損できる遺伝子組換えマウスをからSema3Aが欠損された筋衛星細胞を単離し、同様のクロロゲン酸添加実験を行った。その結果、Sema3Aが欠損された状態にもかかわらず、Sema3A依存的なシグナリング軸(myogenin, MEF2D, 遅筋型myosin)のmRNA発現量を増加させた。この結果から、クロロゲン酸の添加によるSema3A依存的なシグナリング軸の活性化は筋幹細胞由来のSema3Aと独立していることが示唆された。 上記の結果より、クロロゲン酸がSema3A細胞膜受容体のアゴニスト活性を有する仮説をさらに支持するデータを得る事ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルスの影響により、大学への立ち入り制限が設けられた。特に2020年4月から5月の緊急事態宣言の発令により、実験を中断せざるを得ない状況であった。また緊急事態宣言があけてからも大学の制限措置が続いたことや、研究室内で陽性者が出たことによる自宅待機など、通常よりも研究活動の制限の大きい年であった。研究内容で遅れが出たのではなく、純粋に研究活動の時間が制限されたことによる遅れである。
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Strategy for Future Research Activity |
クロロゲン酸がSema3Aを介さずに作用していることが明らかとなったため、Sema3A細胞膜受容体(neuropilin2-plexinA3複合体)に対するクロロゲン酸のアゴニスト活性に評価していく。マウス由来筋芽細胞に対しsiRNAによりneuropilin2, plexinA3をノックダウンした状態でクロロゲン酸の添加実験を行う。この条件下でSema3A依存的なシグナリング軸の活性化が起きない場合、クロロゲン酸がアゴニスト活性を有する根拠として重要なデータとなると考えられる。 また更なる応用分野の拡充を目的として、筋幹細胞分泌因子Sema3Aの生理機能の追究を行う。Sema3Aは多機能性制御因子として知られ、神経軸索ガイダンス因子や、血管新生に関わる機能を持つことが知られる。骨格筋の損傷・再生過程において新生筋線維の形成、運動神経支配、血管配置は巧妙に制御されている。これらの適切なタイミングでの配置を筋幹細胞由来のSema3Aが担っているという仮説のもと、Sema3A-cKOマウスを用いて検証していく。
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