2020 Fiscal Year Annual Research Report
高炉スラグ微粉末の還元効果によるセメント硬化体の六価クロム溶出抑制に関する研究
Project/Area Number |
20J13724
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
文野 光 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 六価クロム / 高炉スラグ微粉末 / 還元効果 / 固定化 / 吸着 / 炭酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コンクリートから溶出する六価クロムの高炉スラグ微粉末を用いた抑制技術に関する研究である。産業副産物である高炉スラグ微粉末を利用した本研究では低環境負荷型コンクリートを実現する上で必要不可欠な事項であると言える。 本研究では低環境負荷型コンクリート開発の発展として、コンクリートから溶出が懸念される有害な六価クロムの抑制に関する研究である。セメントに含有している六価クロムは硬化時にセメント水和物に固定化および高炉スラグ微粉末の還元効果による溶出の抑制が行われる。しかし、それらの抑制効果は有効であるが不明な点があることが懸念されている。よって、六価クロムの抑制効果を正確に検討することは低環境負荷型コンクリートを実現する上で必要である。本研究の目的は高炉スラグ微粉末に含有する硫黄の形態の六価クロムの還元効果と高炉スラグ微粉末の固定化と還元効果の初期および長期の抑制効果を明らかにすることである。 本研究で検討すべき内容である、セメントペーストの練り混ぜ時とセメント硬化体の炭酸化後の六価クロム溶出抑制効果を確認した。高炉スラグ微粉末を使用した場合、注水直後から六価クロム濃度が減少することを明らかにした。高炉スラグ微粉末量を増加させることにより、還元効果による六価クロム溶出抑制効果が増加する傾向を示した。加えて、炭酸化したセメント硬化体の六価クロム溶出量を実験的に検討した。炭酸化したセメント硬化体においても、高炉スラグ微粉末の還元効果は持続することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の進捗状況はおおむね順調に進展している。新型コロナウィルス等の影響により一部の実験の前倒し等を行っている。 本年度ではセメント硬化体における六価クロム溶出抑制効果に対して、実験を行い再現性などの検討を行った。また、初期の高炉スラグ微粉末による還元効果による六価クロム抑制効果の検討も行った。その結果、高炉スラグ微粉末を使用した場合、注水直後から六価クロム濃度が減少することを明らかにした。高炉スラグ微粉末量を増加させることにより、還元効果が増加する傾向を示した。加えて、炭酸化したセメント硬化体の六価クロム溶出抑制効果を実験的に検討した場合、炭酸化したセメント硬化体においても高炉スラグ微粉末の還元効果は持続することが明らかとなった。以上の結果からセメント硬化体においても還元効果による六価クロム溶出抑制効果が十分に発揮されることが実験的に明らかにした。 本年度に行った研究内容に関して、日本建築学会の年次大会論文において対外発表を行うことを予定している。また、本年度実施した内容を日本建築学会の建築学会構造系論文集に提出しており、現在査読審査中である。以上の論文提出状況や実験実施状況を踏まえ、本研究の進捗状況はおおむね順調に発展していると判断した。 本年度の実験は新型コロナウィルスの影響により一部測定が困難であったため、来年度では可能な限り外部の測定装置等を用いて再度検討を行う予定である。 本年度に行った研究内容と来年度に実施する内容を検討し、研究結果を考察し、学位論文を執筆する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではセメント硬化体の高炉スラグ微粉末による還元効果の溶出抑制効果のメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度の実験ではセメントペーストの練り混ぜ時や炭酸化したセメント硬化体の六価クロム溶出抑制効果の検討を行った。その結果、高炉スラグ微粉末の還元効果により六価クロム溶出抑制効果を改めて明らかにした。 本年度では申請者の所属する研究機関の実験機器等を用いて実験および測定を行った。来年度では外部の実験施設等を用いてイオンクロマトグラフィーやICP発光分光・質量分析などを行い、幅広く測定を実施して、成分分析等を用いて実験データの充実を目指す。具体的にはセメントペーストの練り混ぜ時を想定して、高炉スラグ微粉末から溶出する硫黄の分析などを行い、六価クロムの減少量との比較を行う。また、炭酸化したセメント硬化体の溶出抑制効果についても再検討を行う。実施した促進炭酸化試験は高濃度の二酸化炭素ガスを用いている。高濃度の二酸化炭素による促進炭酸化試験は実際の環境と異なり、セメント水和物の組成変化に差があることが指摘されている。低濃度の二酸化炭素ガスを用いた場合の促進炭酸化試験を実施したセメント硬化体の六価クロム溶出抑制効果の検討も必要である。よって本年度に実施したセメント硬化体と同様の試験体を作製し、来年度において低二酸化炭素濃度の促進炭酸化試験を行う。 本年度に行った研究内容と来年度に実施する内容を検討し、研究結果をまとめて、学位論文を執筆する。
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