2020 Fiscal Year Annual Research Report
ナノギャップを伝わる伝熱機構の解明~輻射か伝導か?~
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20J13729
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立川 冴子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 輻射 / 伝熱 / MEMS / 表面フォノンポラリトン / 3ω法 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロヒーターとマイクロ熱センサーを集積したデバイスを作製し、100 nm~10 μmのギャップにおいて真空中での熱輸送計測を行った。 具体的にデバイス作製においては、表面フォノンポラリトンを誘起するSiO2/Si/SiO2の3 層膜構造を有するマイクロヒーターとマイクロセンサーを作製した。特に、デバイスの支持梁を十分長くとることにより、高感度なデバイスを設計し、作製プロセスの最適化を行った。 熱測定については、交流信号を用いる3ω法と、温度上昇による差分電圧を取り出すことができるホイートストンブリッジ法を組み合わせることで、より高精度な系を採用し、熱測定方法の確立と評価を行った。ヒーター側では、マイクロヒーターに1ωで振動する電流を入力し、2ωで振動する温度変化に伴い変化する電気抵抗と、1ωで振動する入力電流との掛け合わせで生成される 3ω成分を抽出し、マイクロヒーターの温度上昇を算出す。センサー側においては、微小電流を流すことで、ヒーターから伝わる2ωの温度変化に伴う電気抵抗の変化をホイートストンブリッジとロックインアンプで抽出し、マイクロセンサーの温度上昇を算出する。ヒーターおよびセンサーの温度上昇と入力電力から、ギャッ プの熱コンダクタンスを求めた。 高感度なデバイスと熱測定系での測定により、数 nW /Kの熱コンダクタンスを測ることができた。これは、伝導に比べて微弱な放射による熱輸送を検出するために適した系を構築することができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナなどの影響により、デバイス作製が想定より遅れてしまい、TEM内に搭載することはかなわなかったが、ギャップ間熱輸送を測定するためのデバイスと測定系を構築することができた。遠方場の熱輸送も検出できるほど高精度な系を構築できたので、ギャップ依存性について十分議論ができる環境が整ったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したデバイスをTEM内で駆動することを試みる。さらに測定した熱コンダクタンスの理論的な評価を行う。特に理論的評価については、まだモデルの確立していない領域なので、シンプルなモデルによるギャップ熱コンダクタンスの推定から始め、徐々に実際の系における実験値とのすり合わせを行っていく。
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