2020 Fiscal Year Annual Research Report
中性子星連星の合体前電磁波対応天体に関する理論的研究
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20J13806
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
和田 知己 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 重力波 / 高速電波バースト / 連星中性子星合体 / パルサー磁気圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず中性子星を含むコンパクト星連星が合体直前に軌道運動を由来として放射する電磁波の光度および 周囲の電磁場の解析的な計算を、ニュートン重力のもとで行った。その結果、典型的な 10 の 12 乗ガウス程度の 大きさの磁場を持つ中性子星の合体において、主に次の二つの場合に電波放射の光度が高速電波バーストの光度 と同程度になることがわかった。一つは、ブラックホールのスピンは小さいが、合体に伴う全電磁波光度の 10% が電波放射として放射される場合である。もう一つは全電磁波光度の電波への変換効率が 0.1%程度と小さいが、 ブラックホールのスピンが大きく、中性子星が合体の直前まで壊されないような場合である。これらの場合には コンパクト連星合体由来の重力波と高速電波バーストが同時に観測される可能性がある。 また、真空中を中性子星が公転運動する際に作られる電磁場の解析解を用いて、公転運動によって形成される 磁気圏の粒子数密度を解析的に評価した。この磁気圏は先行研究の数値シミュレーションから合体直前に形成さ れることが既に明らかになっていたが、我々の導出した解析解を使うことで、その磁気圏のプラズマ数密度のパ ラメータ依存性を導出した。その結果、合体直前は軌道運動由来の磁気圏の粒子数密度が高く、プラズマの multiplicity が大きい場合か、高速電波バーストが星の近傍で形成されると我々には観測できなくなることも明 らかになった。 2020年に発見された高速電波バーストFRB 121102の周期的活動性に関する研究も行った。初めて周期的 活動性が報告された FRB 180916 に対して考案されたモデルの一つである binary comb model を FRB 121102 に対 して適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュートン重力の場合の計算を終了したため。 相対論的な場合の表式は計算途中であるが概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
相対論的な場合の表式を導出する。 本来、この結果と中性子星磁場分布から表されるイベント率を高速電波バーストの観測によるイベント率と比較する予定であったが、近年の電波望遠鏡感度の発展により、連星中性子星合体で高速電波バーストを全て説明することができないことが明らかになった。そのため、本来計画していた高速電波バーストのイベント率との 比較は行わない。 そのかわりに、高速電波バーストの理論的なモデリングを行う。
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Research Products
(9 results)