2020 Fiscal Year Annual Research Report
オプトメカニクスに基づく高感度・広帯域な核磁気共鳴測定法の開発
Project/Area Number |
20J14033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨永 雄介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | オプトメカニクス / NMR / 高感度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では光と機械振動子の相互作用を利用して核磁気共鳴(NMR)信号を光学的に検出することを行う.このオプトメカニカルな相互作用を利用して機械振動子の振動モードを冷却し,高感度かつ広帯域なNMR信号検出装置を開発することが目標である.実証段階での装置の感度は著しく低く,この方法で感度を向上するためにはNMR信号検出用のLC回路と薄膜振動子の結合(電気機械結合)を大幅に強化する必要があった.そこで本年度は,薄膜を用いたキャパシタ電極のデザインを見直して,電気機械結合を増大させることにより,感度の大幅な向上を目指した.また,実際に測定したい物質のNMR信号を取得するためには,NMR測定用の超伝導磁場のボア内に薄膜振動子を設置できるように,装置を小型化する必要もあった.薄膜を設置する真空チャンバーを手のひらサイズに小型化し,そこに光学部品や電気回路も組み込んだ.小型に組み立てたことで,装置は振動に堅牢になり,また配線も最小距離になったことで信号の損失を抑えられた.以上の工夫により,電気信号の光変換の効率が実証段階のものと比べて1000倍のオーダーで向上した.一方,広帯域化するために光と薄膜振動子の結合の強化によるモードの冷却も試みたが,これは薄膜振動子からの熱の散逸速度が遅いため,現状の系では達成が難しいことがわかった.しかしながら,作製した装置を用いて,電気機械結合の強度を上げながら電気信号の光変換実験を行うと,ある点で電気信号の光変換効率が飽和し,それ以上結合強度を上げても定常状態での感度が上昇しなくなることがわかった.これは電気機械結合を強化した結果新たに見出された現象であり,オプトメカニカルな冷却現象と類似のフィードバックの効果であることが示唆される.飽和時の感度は一般的なNMR法に迫っており,薄膜のQ値を最適化すれば従来の検出法を上回る感度となることが予想される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光変換効率を理論的に検討し自作の検出装置にフィードバックすることで,3桁の検出感度向上を実現し,またそれ以上の向上に関しても具体的な道筋を拓いた本研究は,NMRにとどまらず量子計測等の分野にも影響を与えうる結果だと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,最終目標であるNMR測定やイメージングへの応用を行う.また,薄膜の光学的特性の検討を行い,電気機械結合ではなく光機械結合の観点から装置改良にアプローチする.
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Research Products
(3 results)