2020 Fiscal Year Annual Research Report
脊柱を模した空気式半外骨格型装置による促通反復療法に基づいた歩行支援に関する研究
Project/Area Number |
20J14076
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
八瀬 快人 香川大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | ウェアラブル装置 / ロボット / 空気圧アクチュエータ / 歩行支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに提案した体幹の保持のみが可能な装置は,人工筋を脊柱に対して左右に2本配置していた.この左右に配置した2本の人工筋の収縮力の差によって,回旋支援が可能であると考えた.そのため,新たに装置胸椎部と腰椎部の間にボールベアリングを内蔵した回旋ユニットを搭載した.この回旋ユニットは内側のディスク部品が人工筋に接続されたワイヤーによって駆動し支援トルクを発生する.装置下部は人体腰部に布製のサポータで固定し,装置上部は樹脂パッドで左右の肩部を固定することで,装置が発生する支援トルクを体幹に伝達することが可能である. 試作した装置単体での発生トルクを確認するため2本の人工筋に圧縮空気を供給し,その時の回旋ユニットが生じるトルクを測定した.その結果,人工筋への供給圧力差が80[kPa]の時に最大1[Nm]の支援トルクが発生することがわかった.このトルクは肩部樹脂パッドが装着者の肩を10[N]程度で押す力に相当する.続いて,生じる支援トルクが装着者にどのような効果が生じるかを装着実験にて評価した.実験では,装着者が椅子に座った状態で,非支援時と支援時の条件下において回旋主要筋である内腹斜筋と外腹斜筋の筋活動を比較した.被験者は健康成人男性2人で,椅子に座った状態で一定時間内に数回の回旋運動を行う作業を実施し,この時の筋電位を測定した.本実験は,香川大学創造工学部研究倫理審査委員会の承認に基づき実施した(承認番号:01-013).また,歩行動作への応用を考慮して装置の駆動速度評価も行なった. 結果として,両被験者ともに支援時に筋活動の減少傾向が確認された.これは,支援時に支援トルクが装着者に伝達されたことを示唆する結果である.装置の動作特性評価では,1.0[Hz]程度の速さまで駆動可能であることが確認でき,通常歩行に相当する回旋運動の実現可能性を示唆する結果を得た.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の予定は,回旋動作を支援可能な装置構造の立案と試作が主な作業内容である.特に装着型装置は軽量かつシンプルな構造が望ましい.また,歩行時の姿勢の保持と回旋支援を同時に実施するためには,これまでに提案した体幹姿勢を矯正可能な構造を失わず,回旋可能な機能を追加する必要がある.そのために,2本の人工筋を用いた拮抗構造を採用した.その結果,装置のサイズ,重量ともに大きな変化は無く目標とする動作を可能とする装置を実現できた.また,座った状態での提案した装置を用いた回旋動作では装置からの支援トルクによる効果を確認できたことから,提案する構造の有用性を示唆する結果を得た.装着者の歩行速度や状態検出を行うため,足底に感圧センサを取り付けることによる歩行周期の測定を行った.また,McKibben型空気圧ゴム人工筋への供給圧力の応答遅れを考慮し,最適な支援タイミングで収縮力が所望の支援力となるような制御手法を提案した. 年度開始から初夏にかけコロナウイルス感染症対策のための研究遅延も発生したが,上述のように体幹装置の構造提案,評価を遂行できたことから,上記のように研究の進行状況を自己評価した.また現在は,歩行中の支援にも応用するための装着者への最適な支援タイミングの決定手法についても検討しているため,今年度から予定どおり歩行時における装置の評価を行いたいと考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験により,提案する装置によって装着者に回旋運動の支援が可能であることが確認できた.しかし,実際に回旋ユニット発生している支援トルクは装置の装着ズレなどの影響で,人体に適切に伝達できているとは限らない.これらを解決するために,使用する人工筋の選定や回旋ユニットが出力した支援トルクを適切に伝達するための人体との固定部など,更なる調整を実施する.また,足底の感圧センサから得た歩行周期を元に歩行時の最適な支援タイミングを決定する.決定した支援タイミングが妥当であるかは,装置を用いない状態で事前確認し,その有効性を確認する.これらを終えた後,今年度は歩行中における装着者への効果の検証を行う. 評価実験は2つ行い,装置の改善案などがあればその都度改良を行う.一つ目の実験では,歩行時に姿勢矯正のみを行なった場合の歩容の変化を確認することで,姿勢変化による装着者への影響を調査する.また本装置は,姿勢矯正をリズム的に作用させることが可能なため,歩行時の体幹筋の活動に合わせて矯正力を生じさせた場合の歩容変化や筋活動の評価を行う.二つ目の実験では,装置から体幹への回旋支援を行い歩容の変化を評価する.これらの実験から得た結果から提案する装置の歩行訓練への応用の可能性を示す.
|
Research Products
(1 results)