2021 Fiscal Year Annual Research Report
江戸中期における茶の湯と禅思想 ―『南方録』と「径山寺台子伝来説」を起点に―
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20J14125
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
櫻本 香織 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 『南方録』 / 立花実山 / 露地 / 仏国土 / 『正法眼蔵』 / 卍山道白 / 道元 / 宗統復古 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、江戸中期における茶の湯と禅の関係性を、A『南方録』とB「径山寺台子伝来説」から思想的に解明することである。2021年度は、Aについて以下2点の研究を行い、その成果を口頭発表および論文投稿した。 ①『南方録』における「露地」(茶庭)の思想的背景について、「草庵」と同様に『正法眼蔵』からの影響があるか否かを検討した。『南方録』「滅後」の巻には、わび茶の湯は「清浄無垢ノ仏世界」を表し、露地・草庵は「仏心ノ露出スル所」であり、また、「露地ノ一境」は浄土世界ヲ打開」く修行の場とする。『正法眼蔵』「行持」では、露地は「諸仏の修行の道場」であると述べられ、同「法華転法華」では、露地は「平穏」な場所であるとされ、さらに「天人常充満のところは、すなわち釈迦牟尼仏・毘盧遮那の国土、常寂光土なり」と説明される。『南方録』の「露地」の背景に、『正法眼蔵』における「露地」の解釈の影響があると指摘した。 ②『南方録』「滅後」冒頭部に見られる「利休回帰」と呼ばれる志向が、江戸元禄期の曹洞宗中興の祖である卍山道白が行った、道元に復古するという「宗統復古」改革に影響を受けたものであることを検討した。この考察は大きく分けて二つの側面から行った。まず、〈a〉『南方録』「滅後」冒頭部と『正法眼蔵』「行持」を比較し検証した。次に、〈b〉『南方録』奥書にみる利休の年忌に関する話と、実山や卍山の道元の忌辰についての記述を比較し、かつ卍山と実山の「宗統復古」における理解から、「利休回帰」志向の背景を探った。この検証から、「利休回帰」志向が見える『南方録』「滅後」冒頭部の話には、『正法眼蔵』「行持」が強い影響を与えていることを明らかにした。また、実山が『南方録』において利休を茶の湯の流祖と位置づけたのは、実山の道元を曹洞宗の祖とする尊崇の表れであり、卍山の「宗統復古」改革に倣ったものであると指摘した。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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