2020 Fiscal Year Annual Research Report
Changing your Thinking and Believing in your Potential: A key to Overcoming Childhood Poverty
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20J14171
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
李 受ミン 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | Shift-Persist strategy / Socioeconomic status / Psychological Health / Emotion regulation |
Outline of Annual Research Achievements |
社会的・経済的な困難な逆境は,人々を苦しませ,生きることへの期待を奪い,心身ともに不健康状態に陥るという悪循環を引き起こす。それだけでなく,日々の生活の中で断続的なストレス状況にさらされることにより,自身や社会に対するあきらめが助長されることも知られている。しかし,このようなストレス状況における心身の健康をいかに改善できるか、またどのような方法で改善できるかについてはまだ未検討である。近年,社会経済的地位(以下,SES)の低さが子どものいまと未来を奪い,日本国内でSESの低さに伴う心身の諸問題に対する社会的な支援が実質的な救済になっていない現状があるからこそ,低SES者が抱える心身の問題を解決する別の手立てを考える必要があると考えられる。この問題を解決するために,「Shift-Persist strategy (以下,S-P)に着目し,S-PがSESの低い人々の心身の健康に資するメカニズムを明らかにした上で,S-Pの有用性について再検証することを目指している。 初年度については,レビュー論文においてSESの低い人々の身体的・精神的健康におけるS-Pの有効性に関するこれまでの先行研究をまとめ,最近のS-Pの研究動向を紹介するとともに,S-Pの理論モデルの検証と精緻化をする上で解かれるべき3つの課題(一般化可能性の問題・ロールモデルに関する課題・S-PがSESの低い人々の健康に及ぼすプロセス)を取り上げ,指摘した。また「安定的でポジティブなロールモデルの存在が,SESの低い子どものS-Pを発達させるのか」という理論の前提条件を検討し,親と子どものS-P得点が似ていること,つまり,親のS-P得点の高さが子どものS-P得点の高さを予測することを確認した。この結果はJapanese Psychological ResearchのOriginal Articleとして審査を受け,受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染状況拡大に伴い,作業に遅れが出ている。当初S-Pと生理的反応/および心理的反応の関連性について検討するために,実験室実験を計画していたが,コロナウィルス感染拡大により生理的反応を測定する指標を用いることが困難となったため,不安・うつなどの心理的反応のみを用いるように研究計画を修正した上で,再実験を行った。しかし,分析に必要な実験サンプルを確保することができず,成果を取りまとめることが困難となったため,十分な検討ができていない状況である。そこで,他の研究者との打ち合わせを通して,再度,実験計画を検討し,オンライン実験を通じてデータの収集ができるよう研究計画を修正しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として,まずはクラウドソーシング企業のモニター(100名程度)を対象としたオンライン実験を通して,社会経済的地位の低い人々のS-Pと心理的反応(不安,抑うつ傾向,ストレス反応,ポジティブ感情などの主観的感情)との関連性およびその変動について検証する。次に,親子のS-Pの傾向とその個人内変化について5回目までの縦断調査により得られたデータを解析し,結果を公表する予定である。
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