2020 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental simulations of divertor plasma and fundamental studies on plasma detachment by using the linear plasma device
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20J14206
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
瀧本 壽来生 東海大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 核融合 / ダイバータ / 直線型装置 / 非接触プラズマ / 水素同位体 / タングステン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,直線型ダイバータ模擬装置において実機ダイバータ級のプラズマ密度・温度を達成し,トーラス型装置では安定的に生成できていない完全非接触プラズマ(再結合プラズマ)生成の過程を解明・制御することが目的である.また,その高パラメータと非接触プラズマを定常的に生成できる点を活かして,ダイバータ材料の有力候補であるタングステンのプラズマ暴露実験を行い,接触・非接触プラズマのタングステンへの表面改質と水素同位体残留のデータを取得する. 実験領域(計測可能な領域)を従来よりもプラズマ源に近い場所に設け,Langmuirプローブ計測を行ったところ,シングルプローブ・トリプルプローブの双方で,電子温度15~20 eV,電子密度~10^19 /m^3のパラメータを水素プラズマにおいて得ることができた.特に電子密度は従来より一桁高いパラメータである.また,このプラズマに対して水素ガスを導入したところ,非接触化に伴う電子温度・密度の著しい低下と高励起光の増加が確認された.またプラズマ周辺部において,分子活性化再結合に重要な負イオンの増加も確認された.しかし,プラズマの発光部とターゲットが完全に離れておらず,プラズマ密度も十分に減じていないため,完全な非接触プラズマには至っていないと考えられる.従来よりも明らかに非接触化に必要なガス量・圧力が増大し,実機における非接触化の困難につながる実験パラメータの領域に近づいたと考えられる. 次に,同実験領域において重水素プラズマにタングステンを暴露した.イオン粒子束は,ITERダイバータで想定されるものより未だ2桁程度小さいが,イオンフルエンスとしては1ショットに届いた.また,非接触プラズマへの暴露実験も行い,同程度の粒子束の接触プラズマと比べて重水素残留量が5分の1と,水素同位体残留における非接触プラズマの有意性を示す結果を得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今期はコロナ禍による大学への入構制限と,放電電源故障などの装置トラブルにより遅れが生じた.これにより,当初の研究計画全体に遅延が発生した.今期の最大の影響としては,予定していた高周波加熱系の作成に必要な予備実験等が十分に行えず,来期に延期せざるを得なくなったことである.しかし,加熱部チャンバーの冷却フランジの作成の一部,高周波加熱実験に向けた加熱効率の条件出しや非接触実験時の加熱部の圧力上昇抑制のための予備実験なども実施できており,来期への準備は最低限ではあるが進んでいる. 装置上流部での実験により,当初の目的のひとつであるプラズマの高密度化による非接触プラズマへの影響が,非接触化に必要なガス圧力の増大という想定通りの傾向の実験結果が得られたことは大きな成果のひとつといえる.ただし,非接触化に必要なガス量が増大したため,実験領域の排気速度を減少させるか,ガス導入量の増加の手段を講じる必要がある. タングステンへの重水素プラズマ暴露実験については,国内外での学会において成果を報告している.また,プラズマパラメータの向上は負イオン生成量の向上につながり,NBI用の負イオン源開発の研究の進展にも寄与した. 以上のように,当初計画に遅れが生じているが,最低限の準備が進んでおり,目的に資する成果も得られているため,計画は「やや遅れている」と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
高周波加熱系の作成・準備が整い次第,水素プラズマでの高周波加熱実験を行う.また,並行して第二陽極の作成を進め,こちらも随時実験を実施する.今期では,プラズマパラメータの向上により,装置が輻射を含む熱負荷増大により損傷することが確認されたため,実験に向けてチャンバーの除熱を十分に行う.高周波加熱部のチャンバーについてはフランジを新たに作成することで対策する.その他の水冷部については現状問題はないと考えているが,必要に応じて流量や温度の設定を見直す. 高周波加熱・第二陽極を使用したプラズマにおいて,非接触プラズマを生成し,Langmuirプローブ計測,分光計測等を実施する.得られた物理量を衝突輻射モデルを通して分析し,非接触プラズマに対するイオン温度・イオン流速・プラズマ密度の影響を調査する. また,今期においてITERより2桁小さいイオン粒子束,1ショット相当程度のイオンフルエンスしか得られなかった重水素プラズマであるが,密度の向上によりITERに向けたスケーリングに寄与するデータの取得を行う.さらに,非接触プラズマのタングステンへの影響についても,プラズマパラメータの増減,ターゲットバイアスによるイオンエネルギーの制御,試料温度の制御などを行い,表面改質および水素同位体残留量についてプラズマ・材料の両面から調査する.
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