2020 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on School Reform by School Social Workers Assigned to School
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20J14261
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤本 啓寛 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2) (00962086)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | スクールソーシャルワーカー / ソーシャルワーク / 教育社会学 / 福祉専門職 / 労働者 / 再配分と承認 / ジレンマ / 学校の変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は理論研究(1・2)と臨床研究(3)を組み合わせて行われた。 (1)理論研究については、2020年度には再配分と承認という2つの社会正義パラダイムを用いてスクールソーシャルワーカーの実践をどのように解釈することができるのかについて、社会正義に関わる先行研究をレビュー・援用することを通じて検討することができた。 (2)以上の理論研究を進めていく中で、狭義の理論的検討にとどまらず、スクールソーシャルワーカーという職域がそれらの価値を体現できるだけの専門性を有しているのかが切実な研究課題として立ち現れた。そこで理論研究の延長線にスクールソーシャルワーカーの職域の実態を包括的に明らかにすることを追加的な課題として再措定し、スクールソーシャルワーカーの職域に関わる資料・統計の収集・整理ならびに東京都のスクールソーシャルワーカーを活用している52の区市町を対象に情報開示請求(情報提供依頼)を行い、得られた資料を分析することができた。 (3)以上の理論研究ならびにその延長線上に措かれた職域実態研究を基盤とし、高等学校における配置型スクールソーシャルワーカーならびにその学校の教職員に対して複数回にわたる参与観察・インタビューを行う臨床研究を進め、問題意識を漸次構造化させていくことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論研究(1・2)ならびに臨床研究(3)ともに、おおむね当初の計画通りに進めることができ、3回の口頭発表と6回の論文投稿、うち2本の掲載が決定したからである。 (1)に関しては、スクールソーシャルワーカーの支援においては、自己決定という基盤のもとに2つの社会正義がジレンマを起こさず併存しており、どちらかが優勢となるわけではないことを明らかにした。その結果を2020年12月にBNU・KU・UCLIOE・IU・WU Graduate Student Round Tableにて発表することができた。 (2)に関しては、スクールソーシャルワーカーの職域が多様な人材で構成されていることを明らかにし、2020年9月に『早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊』28(1)において掲載・刊行するに至った。またスクールソーシャルワーカーとして就職するうえでのスケジュールが厳しく、資格保有によるインセンティブが低いことを明らかにし、2021年3月に『早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊』28(2)において掲載・刊行するに至った。 (3)に関しては、第一に、教員ならびにSSW自身の専門性を発揮させようとすることが、教員の労働時間の改善をもたらす一方で、自らの労働時間を犠牲にしてしまうというジレンマが生じていることを明らかにした。第二に、その支援が教育に従属する学校においても、SSWが支援の再境界化を行うことで、職務の次元における支援観を縮小させていたことを明らかにした。第三に、SSWが介入によるパターナリズムの行使を手段のみに止めることで、学校が外部の支援機関を知ってつながる契機が生じ、意識の次元における支援観が拡大していたことを明らかにした。以上の結果を日本社会福祉学会でのポスター発表ならびに日本教育社会学会での口頭発表で公開し、得られたフィードバックをもとに2編の論文として投稿・査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は臨床研究での成果として取りまとめている論文の再投稿を行い、掲載に向けての改善を行う。また緊急事態宣言等で滞った臨床研究についても、新型コロナウイルス感染予防に十分配慮しながら継続し、より包括的な知見となるようデータの補充を行う。
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Research Products
(5 results)