2020 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子FOXL2から探る、卵巣発達・疾患のメカニズム
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20J14275
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 遥 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣 / FOXL2 / 顆粒層細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、転写因子FOXL2による卵巣発達・機能制御メカニズムの解明、および、FOXL2の変異や発現異常によって引き起こされる卵巣疾患の発症機序の解明を目的とした。 FOXL2はマウス卵巣の顆粒層細胞において高発現し、卵巣の正常な発達、機能の制御・維持に必須の役割を果たす。しかしながら、その発現がどのように制御されているのか、また、FOXL2発現異常による卵巣疾患の発症機序などの詳細は不明であった。これまでの研究から、卵母細胞と女性ホルモンとして知られるエストロゲンとの共培養によって、顆粒層細胞におけるFOXL2タンパク質の発現が上昇することが明らかになった。そこで本研究では、FOXL2の発現制御機構の詳細、および、FOXL2発現の低下による顆粒層細胞・卵巣への影響解析を行うこととした。 現在までに、卵母細胞とエストロゲンによって培養下顆粒層細胞におけるFOXL2タンパク質・mRNA双方の発現が上昇することを明らかにした。また、卵母細胞とエストロゲンの非存在下では顆粒層細胞におけるFOXL2発現は顕著に低下し、さらに特殊な培養条件下に置くことで、精巣体細胞 (セルトリ細胞) 様の形質を獲得することが明らかになった。 今後は、FOXL2発現が低下した際と維持された際の顆粒層細胞における遺伝子発現を比較することで、FOXL2下流因子、シグナルを理解する。また、マウス生体へのエストロゲン阻害薬投与を行い、FOXL2の発現やFOXL2下流因子への影響を解析し、どの様な病態が引き起こされるのかを特定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はFOXL2の変異型マウスを作出し、その表現型解析を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で予定を変更した。 現在までに、卵母細胞とエストロゲンによって培養下顆粒層細胞におけるFOXL2タンパク質・mRNA双方の発現が上昇することを明らかにした。 また、卵母細胞とエストロゲンの非存在下では顆粒層細胞におけるFOXL2発現は顕著に低下し、さらに特殊な培養条件下に置くことで、精巣体細胞 (セルトリ細胞) 様の形質を獲得することが明らかになった。 以上のことから、おおむね順調に計画は進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、培養下で見られた卵母細胞とエストロゲンによるFOXL2発現の維持、および、FOXL2発現が低下した際のセルトリ様細胞化の2点を生体内でも検証するため、野生型および卵母細胞増殖因子シグナル減弱モデルマウスに対してエストロゲン阻害剤を投与し、卵巣における影響を解析する。
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