2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on transport process of eggs, larvae and juveniles of jack mackerel (Trachurus japonicus) for coastal areas along the Kuroshio.
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20J14281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 和雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | マアジ / 卵稚仔輸送 / 漁獲量 / 暖水波及 / 回遊モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、漁獲資料解析、人工衛星データ解析、数値実験など多面的な手法を用いることで、これまで断片的に理解されてきたマアジ太平洋系群の卵稚仔輸送を明らかにすることである。本研究のこの目的を達成するために、次の3つの達成すべき課題がある。1. 漁獲資料を用いて、黒潮の影響が強く及ぶ沿岸域 (以後、黒潮沿岸域) における稚魚出現パターンを整理し、黒潮によるマアジ稚魚の輸送様式を推定すること。2. マアジ卵稚仔が黒潮から沿岸に至るためには、黒潮から離脱するシステムが存在するはずである。黒潮暖水波及がそのシステムの一端を担っていると仮定し、黒潮暖水波及とマアジ稚魚漁獲量変動パターンを比較することで、黒潮暖水波及による輸送効果を推定すること。3. これまでのデータ解析から推定された輸送様式を数値実験を用いて、より詳細に明らかにすること。 以上の3点について、令和2年度における研究計画に対する実績を以下に示す。 1.鹿児島県、宮崎県、愛媛県、高知県、和歌山県、三重県、静岡県、神奈川県の計8県から提供してもらったマアジ稚魚漁獲資料からマアジ稚魚出現パターンを明らかにした。漁獲量と体長データから個体数に相当する量を見積もり、その個体数相当量の立ち上がり時期と経年の漁獲開始時期ほとんど同等であることから、およそ10年分の漁獲開始時期を調べた。その結果、4-6月に黒潮沿岸域全域でマアジ稚魚が出現することが明らかになり、産卵場の一つである東シナ海に由来する可能性が示された。この成果は国際誌に掲載された。2については、暖水波及と考えられるシグナルと潮位・表層流速(短波レーダ-)の関係を明らかにした。3についてはマアジを模した仮想粒子の輸送―成長モデルを開発し、駆動した。来年度、より空間解像度が高い海洋データ同化モデルでの実験をする準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1については、国際誌に掲載されたことから、順調に進展したと言える。 2の課題について、解析が遅れている。沿岸水温観測点と沿岸潮位観測点には地理的な距離の差があり、暖水波及を本当に捉えているかどうかの検証が十分に行えていない。また、輸送のプロキシとなる漁獲量が、必ずしも沿岸昇温に対応して増加するわけでもないため、解釈が難しい。これらの理由により、十分に進展しているとは言い難い。 3について、モデル自体はおおよそ完成している。令和2年度の数値モデルを用いた研究は次年度以降本格化させるための準備期間と位置づけていたため、進捗は予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
2の暖水波及と輸送についての研究項目が当初の予定通り進展していないことから、推進方針を改める。沿岸水温・潮位の上昇の検出に合わせて可能な限り人工衛星から得られる海面水温を比較し、確実に暖水波及の事例を抽出する。3については、従来の海洋データ同化モデルよりも高空間解像度のデータ同化モデル(水平解像度およそ2km)を用いて、マアジの輸送を包括的に明らかにする予定である。特に、仮想産卵場に対する重みを漁獲資料と合わせて推定する部分まで明らかにする予定である。この重み推定はディープラーニングなどで用いられている数理最適化手法を用いることで解決する予定である。
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Research Products
(1 results)