2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J14287
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
葉 暁瑶 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 京都 / 川端康成 / 戦争 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、三島由紀夫の『金閣寺』と谷崎潤一郎の『鴨東綺譚』に対する検討に引き続き、主に川端康成の描いた京都をめぐって考察を行った。まずは、川端康成『美しさと哀しみと』についての調査をまとめ、オンラインのフォーラムにて発表した上で、「『美しさと哀しみと』の京都が意味するもの―亡霊が宿るけい子をめぐって」と論文化し、作中人物のけい子は音子の死児の亡霊に憑かれていると同時に、主体性が残っていることとその身体自体が京都の表象となっていることを浮き彫りにした。 『美しさと哀しみと』以外に、『美しい旅』『虹いくたび』『たまゆら』などの作品に目を向け、それらに表された京都を考察してきた。『美しい旅』における戦時下の東京と満洲との対比、『虹いくたび』における京都の桂離宮という場所の特殊性、また『たまゆら』における聖書と「古事記」に反映された宮崎と京都との関わりに注目し、研究を進めた。ただそれぞれの考察は準備段階にとどまり、口頭発表で研究成果を発表したが、論文としての発表は各成果の精緻化まで待たなければならない。 川端康成の作品における京都はそれぞれの発表時期と連動しながら、異なる側面をあらわしていることを確認した。ここまで選定した八つの作品に絞り、戦後の川端作品を中心に戦時下の作品を補助線に川端が描いた京都を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の前半に予定した調査はコロナの拡大に伴い見送られ、年末に調整したため、『たまゆら』に関する論文の発表はやや遅れている。他の作品に対する考察はおおむね予定どおりに行っているが、論文として発表するまでは、さらなる資料が必要である。資料調査で予約した資料の到着を待ちつつ、手元にあった資料にもとづいて論文化を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年年末に行われた日本近代文学館での調査に基づいて、『美しい旅』と『たまゆら』に対する考察を精緻化することができると思う。まずは調査から得られた新しい資料を精査してから、以上両作品について研究を完成する。そして、『虹いくたび』に関する口頭発表でいただいたコメントを整理し、残っている課題を解決することを試みる。最後に「東海道」『日も月も』『東京の人』『古都』に対する考察をまとめて、博士論文の執筆に取り組む。
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