2020 Fiscal Year Annual Research Report
分泌系インタラクトームによる基底膜コラーゲン極性輸送の解明
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20J14688
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
天宅 あや 徳島大学, 大学院栄養生命科学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | IV型コラーゲン / 基底膜 / 極性輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、上皮シートの基底面を支える細胞外マトリックスである基底膜がどのように形成されるのか?そのメカニズムについて、分子レベルで解明することを目指す。そのために、基底膜の主成分であるIV型コラーゲンの基底側への方向性を持った分泌機構を明らかにすることを目的とした。巨大なコラーゲン分子は他の多くのタンパク質で見られる極性輸送小胞のサイズに収まらず、コラーゲンがどのように方向性を持って輸送されるのか明らかになっていない。本研究では近年報告されつつあるIV型コラーゲン輸送関連タンパク質を利用してインタラクトーム解析を行い、極性輸送の制御タンパク質の同定を試みた。 まず既知の輸送関連因子にTurboIDタグを付け、相互作用因子を網羅的にビオチンラベルできる発現コンストラクトを作成した。これを用いて輸送阻害剤の処理でIV型コラーゲンの分泌を特定の段階で止め、ビオチン化に変化が見られるタンパク質に注目した解析を計画していた。しかし用いた阻害剤では輸送を完全に停止できずビオチン化パターンに大きな変化がなかった。IV型コラーゲン輸送を厳密に制御できなければ輸送関連因子を絞ることが困難と判断し、輸送制御の検討を行いつつIV型コラーゲンのイメージングと輸送関連因子の発現制御によって輸送機構の一端を解明しようと以下に着手した。 IV型コラーゲン分子に蛍光タグ付けし輸送過程をイメージングするために、IV型コラーゲンの機能を妨げないと予想される領域へ蛍光タグを挿入した発現コンストラクトをいくつか作成し細胞に発現させ、正常に分泌・会合するものについて安定発現株を樹立した。この細胞株を用いて、IV型コラーゲンの細胞内外での会合に関与するいくつかの因子についてRNAi法により発現抑制した時、タグ付けしたIV型コラーゲンの細胞内蓄積が見られ、これら因子が細胞内輸送においても重要な役割を果たすことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IV型コラーゲンの基底側への選択的な輸送のメカニズムについて、本年度はIV型コラーゲン分子へのタグ付けと関連因子の発現制御によって制御機構の一端を示すデータが得られてきた。計画当初はTurboID法による輸送関連因子のインタラクトーム解析を行うことを予定していたが、解析にはIV型コラーゲンの輸送を制御する実験系の確立が必要と判断された。そこで現在は輸送を厳密に制御する系の検討を行っている。さらに前述の検討と並行してIV型コラーゲン分子への蛍光タグ付け位置を検討し、正常に機能するコンストラクトが得られたため安定発現細胞を樹立した。この細胞を用いて、IV型コラーゲンの会合制御に関わるいくつかの因子が細胞内輸送にも関与する可能性を示すデータが得られた。現在ではこれらの因子に着目し、生細胞イメージングやRNAiによる発現制御によって詳細な役割を調べている。以上から当初の計画から手法を変更しているが、研究目的に向かって着実に進捗していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は蛍光タグ付けしたIV型コラーゲンの安定発現細胞を用い、輸送制御の検討を行いつつIV型コラーゲンのイメージングと輸送関連因子の発現制御によって輸送機構の一端を解明していく。RNAi法により発現抑制した時、タグ付けしたIV型コラーゲンの細胞内蓄積が見られたいくつかのIV型コラーゲン会合関連因子について着目し、以下の研究を実施する。 まず安定発現細胞を用いてIV型コラーゲン分泌過程の生細胞イメージングを行う。この時、蛍光タグ付けした輸送小胞のマーカーを同時に発現させることで、分泌過程のどの段階にあるかを判別できる。これにより前述の会合関連因子の発現を抑制した時にIV型コラーゲンがどの段階で蓄積するか調べ、これらの因子が分泌のどのステップに関与するか明らかにする。 ラミニンやパーレカンといった他の基底膜成分についても基底部へ方向性を持って輸送されることが知られている。そこでこれらの基底膜成分の輸送機構と前述の会合関連因子を介したIV 型コラーゲンの輸送機構とを比較することで、IV型コラーゲンに特徴的なゴルジ体から基底側形質膜への分泌のメカニズムを考察する。 以上により得られた研究成果は国内外の学会で発表を行い、原著論文として国際誌での掲載を目指す。
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