2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation for Individual Thermal Comfort
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20J14702
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
野元 彬久 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 熱的快適性 / 温熱環境 / 人体熱モデル / 代謝量 / 個人属性 / 赤外放射 / 被験者実験 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人体を取り巻く様々な温熱環境における温熱快適性評価や健康性評価を行うことを目的としており、本年度は主に以下の3つの研究項目に取り組んだ。 1)人体代謝量に関する調査:本年度は、昨年度実施した代謝量測定実験のデータ分析を行った。その結果、日本人特有の生理反応を明らかにしたうえで、欧米人が基準となっている現代の日本の空調制御方法に対する提言を行った。本研究成果は日本建築学会大会や空気調和衛生工学会大会にて発表しており、国際誌Building and Environmentの採録が決定している。 2)個人属性を考慮した体温調節モデルの開発:温度や湿度などの温熱6要素を入力条件として、人体各部位の生理量(皮膚温、深部温度、発汗量など)を予測する体温調節モデルの開発JOS-3を開発した。プログラムには、高齢化による体温調節機能の鈍化などが追加されており、個人属性を考慮した生理量予測が可能な点が特徴である。さらに、JOS-3はPython3を用いてモジュール化されているため、既存の様々なデータ分析プログラムとの互換性も高く、研究者や設計者がこのモデルをツールとして簡便に使用することができる。モデルの計算方法は国際誌Energy and Buildingsに掲載されており、ソースコードはGithubにおいて公開されている(https://github.com/TanabeLab/JOS-3)。 3)異なる波長帯域放射による皮膚温熱感に関する被験者実験:ある特定の波長域のみを選択的に反射、吸収する素材の開発研究として、異なる波長帯赤外放射に対する皮膚の温熱感覚について被験者20名を対象に実験を行った。異なる波長帯をもつ等熱量放射による一対比較を行った結果、遠赤外放射は近赤外放射に比べ被験者の皮膚温を上昇させ、より強い暑さ感や不快感を与えることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究計画において、前半の1年間は主にモデルの条件整理や被験者実験などを行い、後半の1年間はシミュレータの開発や応用を行う予定であった。 モデルの条件整理や被験者実験に関して、今年度はモデルの条件整理のため、人体代謝量に関する実験を行い、学会発表や査読論文の執筆を行った。人体代謝量に関する研究成果は、日本建築学会大会、空気調和衛生工学会大会、Roomvent 2020(国際学会)にて発表し、国際誌Building and Environmentに採録されることが決定した。一方で、着衣の熱物性値に関する研究は、2020年度に日本建築学会、空気調和・衛生工学会にて発表しているものの、数値モデル化にまでは至っていない。したがって、モデルの条件整理や被験者実験に関する研究遂行状況はやや遅れた状況である。 シミュレータの開発や応用に関しては、2年間の研究計画の中で主に後半1年間で行う予定であったが、今年度は新たな生理量予測シミュレータJOS-3を開発し、国際誌Energy and Buildingsに掲載されるなど、当初の計画以上に進展している。 以上より、総合的な研究の進捗状況として、おおむね順調に進展しているという評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は体温調節モデルを基盤とした温冷感・快不快感予測の確立を目指し、以下の2課題を中心に研究を進める。 1)被験者実験データベースの構築:被験者実験データベースを構築し、モデルの精度検証用の比較データとして用いる。近年、倫理委員会などへの対応で新たな被験者実験の実施が難しくなってきたことから、我々の研究グループで行われてきた被験者実験や、今後新たに実施する被験者実験、また他研究グループによる既往の被験者実験を基に、人体生理量や心理量に関する実験データベースを構築する。モデルの精度検証用の比較データとして用いる。また、データベースを広く公開することで、第三者へのデータ提供を可能にする。 2)新たな温熱快適性シミュレータの開発:体温調節モデルJOS-3を基盤とした温冷感・快不快感予測、血圧予測、熱中症予測手法の確立を行う。Pythonを用いたプログラム開発によって上の予測手法を統合した、「温熱快適性・健康性評価数値シミュレータ(TAT)」を開発する。シミュレータの精度検証を行うため、データベース中の実験再現を行い、実験値とシミュレータの予測値を比較する。実験値と予測値の間に乖離が見られる場合は原因を分析し、シミュレータの改良を行う。
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Research Products
(10 results)