2020 Fiscal Year Annual Research Report
マウス視覚野における投射特異的サブネットワークの構造および機能の解明
Project/Area Number |
20J14709
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
正木 佑治 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | サブネットワーク / 投射特異的 / 狂犬病ウイルスベクター / 二光子イメージング / 多平面同時イメージング / 視覚 / 局所回路 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
げっ歯類の大脳皮質一次視覚野 (V1) には、投射先特異的な独立したサブネットワークが存在することが示唆されている。サブネットワークは神経回路の情報処理に重要な基盤であるにも関わらず、生体内における構造と機能の解析はほとんど進んでいない。その原因として、対象とする神経回路 (サブネットワーク) を生体内で同定し、解剖と対応付けて解析することが困難であること、 脳内で空間的に分布する神経細胞群の活動を、同時に記録できないことが挙げられる。 そこで本研究では、マウス高次視覚野のAL、PM、LMに投射する V1 神経細胞の単一神経細胞とそれに入力するシナプス前細胞の構造学的解析(構成する神経細胞の細胞種・細胞の分布する層・ 領域)と機能的解析(in vivo 二光子カルシウムイメージングによるシナプス前細胞とシナプス後細胞の活動相関解析)を行い、サブネットワークの動作原理を明らかにすることを目的とした。 上記の目的を達成するため、狂犬病ウイルスベクターを用いた単一神経細胞ネットワーク標識法と、多平面同時記録可能な新規二光子顕微鏡システムを新たに開発した。単一神経細胞ネットワーク標識法は、生体内の目的とする単一神経細胞にシナプス接続する細胞を標識可能である。解剖学的解析から、同一領野、同一層の神経細胞であっても、構成する神経回路構造が大きく異なっていることが明らかとなった。新規二光子顕微鏡システムは、空間光変調器(SLM)と電気式焦点可変レンズ(ETL)を組み合わせることで、異なる深さに存在する神経細胞のin vivo二光子カルシウムイメージング、さらにはベッセルビームを用いたボリュームイメージングを可能とした。V1の第2/3層および第5層神経細胞の活動を同時記録し、ネットワークが異なる層にまたがり構築されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブネットワークの標識に必要なin vivo single cell electroporation用のプラスミドの作製、ウイルスベクターの作製、対象とする単一神経細胞ネットワーク標識法の確立(ウイルス注入量・座標の設定、高次視覚野投射神経細胞へのelectroporation法の確立)を完了した。さらに、マウス個体ごとの脳領域を同定する内因性信号イメージングシステムを構築し、詳細な視覚野構造のマッピングを可能とした。現在は、マウス個体ごとの高次視覚野領域を同定し、逆行性感染ウイルスベクターによる各高次視覚野投射V1神経細胞の標識と、それらの細胞の単一神経細胞ネットワーク標識を実施し、解剖学的解析に取り組んでいる。 また、新規二光子顕微鏡システムのさらなる改良を行い、安定した多平面同時イメージング、ベッセルビームを用いたボリュームイメージングを行うシステムを構築した。V1の異なる層に分布する神経細胞、単一神経細胞の異なる深さに分布するスパインの機能イメージングおよび解析法の開発を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、高次視覚野への投射先ごとのサブネットワークの解剖学的解析を進め、構成する神経細胞の細胞種・細胞の分布する層・ 領域を明らかとする。また、この解剖学的知見より、機能的イメージングで対象とする領域や視覚刺激条件の最適化を行う。 また、サブネットワークの機能解析を行うにあたり、神経細胞活動に加えて、マウスの生理状態をモニターするシステム (トレッドミルによるlocomotionの記録、カメラによる瞳孔・表情の記録) の構築を行う。 現在の課題として、サブネットワークの機能解析を行う上で、カルシウムイメージングに用いるGCaMP6mの蛍光強度が不十分であることがある。この課題に対して、イメージングウィンドウの厚みの変更、他のカルシウムインジケーターの検討を行う。
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