2020 Fiscal Year Annual Research Report
海洋環境条件と個体群交流がケンサキイカの資源変動に与える影響
Project/Area Number |
20J14792
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
Pang Yumeng 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ケンサキイカ / 生活史特性 / 個体群交流 / 環境条件の影響 / 資源量変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)これまでの研究によって、ケンサキイカの生活史特性は海域ごと・孵化季節ごとに異なり、対馬と台湾の個体群は交流している可能性が示唆された。得られた研究成果を投稿論文として発表することができた。
2)日本と台湾のケンサキイカ個体群において、生活史特性(外套長・体重・外套重量・生殖腺重量・成熟度、成熟雄は繁殖戦術、成熟雌は孕卵数と卵径サイズ分布)の調査は、2017年5月より2020年8月までの3年半継続して実施した。これにより得た成熟雌の繋殖特性のデータを海域・季節で比較し、異なる環境条件が雌の繋殖特性に与える影響を明らかにした。ケンサキイカでは、産卵期の水温が高いほど孕卵数は少なく、平均卵母細胞サイズは大きくなることが分かった。長期的資源量変動解析でみられた日本のケンサキイカ資源量が温暖期に減少することの生物学的なメカニズムは、成熟雌の孕卵数が低くなったためと考えられた。
3)計420個体の平衡石を用いて、日齢を調べた後に、レーザーアブレーションICP-MSによる微量元素組成のファインスケール分析を行った。カルシウム(Ca)とともに、ストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)などの8種類の微量元素を測定した。海洋生物の硬組織のストロンチウム(Sr)は経験水温と負の相関を示すことが知られているが、ケンサキイカの平衡石縁辺のSr/Caでは採集時の水温と負の相関が見られ(r = -0.462, p < 0.0001, Pearson’s)、Mg/Caでは水温と正の相関が見られた(r = 0.398, p < 0.0001, Pearson’s)。また、同じ時期に孵化し、同じ場所で採れた個体であっても、平衡石の中心から縁辺までのSr/Caの変化は個体により大きく異なるパターンがみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本と台湾のケンサキイカ個体群において、生活史特性の調査は、2017年5月より2020年8月までの3年半継続して実施した。しかし、2020年度に予定していた台湾の調査は、新型コロナウィルス感染拡大のの影響のため行うことができなかった。そこで、台湾ケンサキイカ個体群の生活史特性のデータは2年半だけを用いて、今後の解析を行うこととした。研究機関を通じて得られたサンプルの数は十分であり、これを用いて、外套長・体重・外套重量・生殖腺重量・成熟度、成熟雄は繁殖戦術を、成熟雌は孕卵数と卵径サイズ分布を調べた。 また、レーザーアブレーションICP-MSによる平衡石の微量元素分析は、2020年度に骨研究の解析には十分な数である420個体分を完了している。2021年度は得られたデータを解析しする予定であり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までに、本研究で用いるデータの収集は概ね完了している。2021年度は最終年度となるため、得られたデータを詳しく分析し、結果を投稿論文と博士論文としてまとめる予定である。解析の結果、微量元素分析結果にデータの追加が必要になった場合は、追加の分析を行う。 2020年に共同研究者によって台湾で採集・保管してあるサンプルは、現状渡航の予定が立てられないため、残念ながら分析できない可能性もある。もし今年度中に渡航が可能な状況になれば、分析し解析に加えたい。今年度中に渡航ができる状況に無ければ、現在まで得られたデータを用い、解析を行う。
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