2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of miniaturized artificial heart with low blood damage utilizing cells separation
Project/Area Number |
20J14805
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
JIANG MING 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 補助人工心臓 / 動圧浮上 / 血しょう・血液細胞分離現象 / 血液ダメージ軽減 |
Outline of Annual Research Achievements |
成人用体内植込型補助人工心臓を小児や新生児用に小型化する際,羽根付き回転子とハウジング間の流体隙間が狭くなり,高剪断応力による血液破壊が懸念される.流体隙間を拡大することでこの課題を解決していたが,小児用に小型化する場合ではこのアプローチに限界がある.そこで,本研究では,本来生体内の血管で起こる血しょう・血液細胞分離現象に着目し,動圧軸受により回転子を浮上する人工心臓内の流体隙間にせん断応力が流体隙間より低くなる新たな溝を設計し,血液細胞を溝へ誘導することで,血液破壊の低減を目指す. この血液細胞分離法を利用する人工心臓の実現には,今年度は血しょう・血液細胞分離と流体隙間におけるパラメータの関係を調査し,分離効果を向上する溝形状の設計方針を確立した. 本研究では,人工心臓内の流体隙間に関わる重要なパラメータであるインペラ回転速度,ギャップサイズ,隙間流量,溝形状と血液細胞分離効果の関係を評価するため,人工心臓の環境を模擬した血液細胞観察装置を製作した.流体隙間に流れる血液細胞を撮影することで,血液細胞の体積分率を解析し,分離効率を算出した.その結果,流体隙間における血液細胞の分離効率はギャップサイズと相関を持っており,ギャップサイズを 20 μ m 以下に狭めると血液細胞体積分率が急激に減少することを確認した. その後,血液細胞分離効果を向上する溝形状の設計の方針を確立するため,人工心臓内の流体隙間における血液細胞の流動特性と分離効率の関係を調査した.製作した血液細胞観察装置を用い,流体隙間における血液細胞の流れ方向は主にインペラの回転速度と隙間流量に支配されることを確認した.更に,血液細胞の流線と動圧溝形状が一致すると極めて顕著な血液細胞分離現象が生じることを確認し,溝形状を血液細胞の流れ方向と一致させる設計方針を確立した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は動圧軸受の溝形状と流体隙間における流体条件が血しょう・血液細胞分離効果に及ぼす影響を解明して,分離効果を向上できる溝形状の設計方針を確立する予定となっていた.今年度はその計画通り,分離効果を向上するための動圧軸受の溝形状の設計方針を確立した. また,血しょう・血液細胞分離現象を人工心臓へ応用するため,確立された設計方針に基づき,分離効果を向上でき,且つ十分な浮上力を提供できる動圧軸受の形状を検討している.設計した動圧軸受の形状を決定する次第,人工心臓へ実装する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
体内植込型人工心臓ではメンテナンスの観点から,通常磁気や動圧を利用してインペラを浮上,回転させる非接触軸受が用いられているが,本研究では動圧軸受を採用し,高い血液細胞分離効率を有する溝形状の設計指針を動圧軸受の設計に融合させることを試みる.目標とする小型人工心臓は,容積10 mL,最大揚程200 mmHg,最大血流量3 L/min,およびインペラとハウジング間の流体隙間が20 μm以下である. まず,高い血液細胞分離効率を有する溝形状を持つ動圧軸受における圧力分布と浮上力を流体潤滑理論に基づいた数値計算流体力学手法を用いて算出し,十分な浮上性能を有する動圧軸受を設計,試作する.試作した動圧軸受を用いて実際にインペルを駆動させ,設計した浮上力を得られているか検証する.その後,高い血液細胞分離効率を有し,且つ十分な浮上性能を持つ動圧軸受を適用した人工心臓を試作し,ブタ血液を用いてin vitro実験を実施し,揚程と血流量を評価する.実験では高速度カメラを用いて血液細胞分離効果を評価し,採血した血液の血漿から遊離ヘモグロビン濃度を分光光度計で計測することで,開発した小型人工心臓の抗血液ダメージの効果を評価する.
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