2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J14821
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松方 妙子 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | カソードルミネセンス / 円偏光 / ナノアンテナ |
Outline of Annual Research Achievements |
光ナノアンテナは、光波長より小さいスケールで光エネルギーの送受を担うデバイスであり、その制御・開発にはナノスケールでの光学特性の直接観察が不可欠である。本研究では、電子線励起光検出であるカソードルミネセンス(CL)法を改良し、角度・エネルギーを同時分解4次元ナノ光イメージングを開発している。2020年度は、この4次元法を実際に応用に使える状態にまで開発を進め、円偏光ナノアンテナの解析を行った。 この4次元CL法では、2次元スキャンする各電子線励起位置において、発光の角度・エネルギー分散した2次元強度データが同時測定される。円偏光を含めた完全偏波を可能にするために、1/4波長板と偏光素子を用いた偏光システムを導入した。このハードウェア開発に加えて、得られた4次元データから特定の角度・エネルギーにおける適切な強度抽出と、そのデータマッピングのため、ユーザーインターフェイスを含むソフトウェア作製を行った。さらに、偏光状態を一意に決定するために、ストークスパラメータを算出し、円偏光場位相と楕円角・回転角からなる偏光パラメータの抽出および空間マッピングを可能にした。 円偏光ナノアンテナとしては、双方向(右偏光・左偏光)の円偏光に対し同等にカップリング可能な、対称なアンテナ構造を採用した。対称アンテナとして、球状シリコンナノ粒子を用い、この完全対称な球体からの左右両パリティの円偏光発生の制御と観測に成功した。対称構造であっても、電子線励起位置・観測角度を適切に選択することで、系全体としてキラリティを持たせることで、円偏光の発生が可能となる。実際、完全偏波4次元CL法を用い、円偏光位相抽出を行うことで、この球体からの円偏光生成を実証した。これらは多極子の解析解を用いたシミュレーションから説明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画どおり完全偏波4次元カソードルミネセンス法が可能なハードウェア開発を行った。さらに得られたデータ解析に必要とされるソフトウェア開発を行い、実際に動作可能な状態にまで開発を進めることができた。 さらに、球状のシリコンナノ粒子を用いて円偏光の応用計測を行うことで、球体からの円偏光生成・検出に成功した。ここで用いられる電子線により電気双極子を回転させるという新しい円偏光生成は、データ解析の中で、膨大な4次元データから偶然見出された。想定できないような偶発的な発見があり、ビッグデータから情報抽出を行うという4次元法の強みが生かされた成果といえる。この電子線励起の円偏光生成メカニズム解明のために、スペインの理論を専門とする研究者との共同研究を行った。多極子の解析解を用いたシミュレーション法を新たに開発し、球体からの円偏光生成メカニズムを解明した。卓越した結果が得られたことで国際共同研究がより強固なものになったといえる。 この研究成果は著名誌であるIF 15.88のACS Nano誌に掲載された。この論文のインパクトは大きく、ACS Nano誌のPerspective記事におけるメイントピックとして大々的に取り上げらている。国内プレスリリースに加え、Science 誌で知られるAAAS EurekaAlertでも国際的に公開された。また、応用物理学会における同内容のポスター発表では、ポスター賞を授与された。 以上のように測定システムの整備から応用計測、さらに新たな数値計算方法の確立まで進められた。成果は、著名誌で発表され、国内外で高い評価を得られており、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに開発した4次元カソードルミネセンス(CL)法を用いて、異なるサンプルの応用計測を実施する。応用計測の中で手法の改良を進め、システムとしての確立を目指す。 2021年度は新たに、電子線スキャンと同期した発光位置イメージングと4次元カソードルミネセンス(CL)法と組み合わせた多次元測定・解析手法の確立を目指す。これまでのCL計測では、電子線により励起位置は確定していたが、発光位置は計測できておらず、「励起位置マッピング」であった。しかし、光ナノアンテナや光導波路を有する光デバイスにおいては、光源とナノアンテナは光回路及び光導波路を介して離れた位置にあり、励起位置と発光位置は一致しない。このようなデバイスにおいては、励起位置に加えて、発光位置解析が必要となる。 発光位置分解CL法と4次元CL法との同時計測を可能とするため、4次元CL法の光学パスからスプリッタを用いて光を分岐し、発光位置と共役な空間にカメラを設置することで発光位置分解を行う。結像系のハードウェアを整備し、電子線スキャンと発光位置イメージングとの同期のための制御システムを構築する。また、この励起・発光位置同時計測カソードルミネセンス法の4次元データを解析するためのソフトウェアの開発を行う。 この発光位置分解CLシステムの発光位置の分解能、結像による投影空間の確認を行い、「対物レンズ」として放物面鏡を用いた結像の性能評価を行う。さらに、この手法を用い、励起位置と発光位置が異なる系の応用計測を目指す。モデルシステムとして、光源・光導波路・ナノアンテナからなる系を設計・作製し、励起・発光位置同時計測CL法と4次元CL法による測定・解析を行う。
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Research Products
(4 results)