2020 Fiscal Year Annual Research Report
単一細胞RNAシークエンシング法による蝸牛と前庭の発生機構の解明
Project/Area Number |
20J14838
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 亮介 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 内耳発生 / シングルセル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
公開された胎齢9.5日-13.5日の発生期マウス全身の細胞の単一細胞RNAシークエンシングのデータより、5,000個の発生期内耳上皮細胞のデータを抽出した。その5,000個の細胞を二次元にプロットしクラスタリングを行った結果、胎齢9.5日の時点では蝸牛と前庭の区別ができないものの、胎齢10.5日の時点で蝸牛と前庭の前駆細胞が明確に異なるクラスターとして検出できた。組織学的にまだ蝸牛と前庭の明瞭な差がない時期に異なる細胞集団としてとらえることができたのは過去の文献で報告がなく、本研究の目的となる細胞集団の検出に成功したと言える。ここまでの成果は2020年にDevelopmental Biologyに掲載された。 公開データの解析で一定の成果が得られた一方で、利用したデータの検出できている遺伝子が一細胞当たり約600個と少なく、蝸牛・前庭の運命決定のメカニズムを理解するためには検出できる遺伝子を増やすことが必要と考えられた。また、胎齢9.5日から10.5日間でのトランスクリプトームの変化が大きく、その間に起こっている現象が重要である可能性もあり、胎齢10.0日のデータもあることが望ましい。そのため、改めて本研究で必要なデータを得る方針とした。 胎齢9.5日、10.0日、10.5日、11.5日の耳胞をサンプルとして、10x Genomics Chromiumを用いて単一細胞トランスクリプトームデータを得た。検出できた細胞当たりの遺伝子数は約6000で公開データの解析の約10倍の遺伝子が検出できた。公開データの解析同様、胎齢10.5日で明らかに蝸牛と前庭の前駆細胞を区別することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
公開データを用いた研究では、一定の成果を論文として報告することができた。また、より詳細なデータを得るために、耳胞のシングルセルトランスクリプトームデータが必要であったが、順調に良質なデータを得ることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られたデータ解析を中心に行い、蝸牛・前庭の運命決定に関わる候補遺伝子を抽出するとともに、遺伝子欠失マウスを用いてそれらの遺伝子の機能解析を行う。まずは、検出された内耳上皮細胞・神経芽細胞 ・内耳周囲間葉系細胞の詳細なクラスタリングとアノテーションを行う。また、特に内耳上皮細胞では、spliced RNA/unspliced RNAの割合から細胞の分化方向を予測するRNA velocity解析を行い、二次元にて可視化された各細胞の分化方向の推定、遺伝子発現がそのtrajectoryにおいてどのように変化するのかを検出する。蝸牛と前庭の運命決定の分岐となるような細胞のトランスクリプトームの特徴を抽出し、蝸牛・前庭の運命決定に関わる可能性のある候補遺伝子を抽出する。また、それらの遺伝子のin vivoでの機能解析を行うため遺伝子欠失マウスを作成する。
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Research Products
(2 results)