2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a synthetic methodology for novel self-assemblies based on molecular self-assembly processes
Project/Area Number |
20J14890
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
立石 友紀 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 自己集合 / 速度論支配 / 超分子化学 / 準安定生成種 / 自己集合過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には,Pd(II)中心錯体と三座配位子(L1)からなるPd6(L1)4四角錐の自己集合過程の解明ならびに速度論的制御を行った.Pd6(L1)4四角錐は2分子のPd2(L1)2部分構造が2つのPd(II)中心錯体によってつながれた構造である.Pd6(L1)4四角錐の自己集合過程ではPd2(L1)2部分構造は確かに生成するが,その後の反応にはほとんど関与していないことがわかった.つまり,Pd6(L1)4四角錐の自己集合はPd2(L1)2部分構造を経ないで成長した中間体から進行していることが明らかとなった.一方,Pd2(L1)2部分構造を出発原料としてPd6(L1)4四角錐に変換することは構成分子の混合による単純な熱力学支配における反応ではなし得ることができないため,速度論支配による反応制御が不可欠である.選択的に合成したPd2(L1)2部分構造に対し,Pd原料錯体を再度加えて反応溶液を濃縮することにより,Pd原料錯体とPd2(L1)2部分構造の分子間反応が選択的に促進し,Pd2(L1)2部分構造からPd6(L1)4四角錐への変換を達成した. また,Pd(II)イオンと二座配位子(L2)からなるPd3(L2)6三角形型錯体の自己集合過程に関して数理モデルを用いた詳細解析においては,Pd(II)イオンとL2の当量比を変化させた際の各構成成分の存在量の時間変化を確認し,数理モデルによるシミュレーションが実験結果をよく再現することを明らかにした.また、Pd3(L2)6三角形を与える通常の等量条件([L2]0/[Pd]0 = 2)よりもPd(II)イオンの等量比を増やした条件([L2]0/[Pd]0 < 2)においては新規構造体の生成が予測され,この生成を実験的に確認し詳細な同定を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自己集合過程の一般原理を突き止めるまでは達成できていないものの,実験および数理計算を用いて解明した自己集合過程に基づき,合理的な反応設計による速度論的支配下の反応を行うことにより,熱力学支配や通常の自己集合条件下では達成できない反応経路ならびに新規構造体を導くことができた.この知見を生かすことにより,分子自己集合における速度論制御のさらなる発展が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで着目してきた金属イオン中心と有機多座配位子との分子自己集合によって生成する自己集合性錯体(MOP)の形成メカニズムだけでなく,MOPと有機多座リンカーとの超分子重合によって生成する配位性超分子ポリマーの自己集合プロセスにも着目して研究を進める.nmレベルの大きさからなるMOPの幾何構造がメゾスケール以上の大きさの配位性超分子ポリマーの自己集合過程ならびに構造や機能に与える影響を明らかにすることを端緒とし,MOPのみならず配位性超分子ポリマーの生成においても速度論支配による反応制御を試みることにより,新たな物質材料合成指針の確立を目指す.
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