2020 Fiscal Year Annual Research Report
π-ベンジル錯体を鍵中間体とする触媒的脱芳香族的官能基化反応の開発
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20J14905
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小松田 雅晃 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 脱芳香族化 / パラジウム触媒 / 炭素–炭素結合形成 / 脂環式化合物 / 芳香族アルコール / 芳香族アミン / ハロゲン化アリール / 三成分連結反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族化合物の芳香族性を壊しながら官能基を導入する脱芳香族的官能基化は、有機分子における頻出骨格であるベンゼン環を多様な脂環式化合物へと効率的に誘導可能な手法である。本研究では、ベンゼン環のもつ置換基の触媒的結合切断を起点としπ-ベンジル錯体を経由する脱芳香族的官能基化の開発を目的とした。 本年度は、先に見いだしたベンジルホスファートのベンジル位C-O結合切断を起点とする手法をベンジルアミン類のC-N結合切断を起点とする脱芳香族的アリル化へ展開した。種々検討の結果、パラジウム触媒存在下、ベンジルアミン類にアリルスズやアリルボラートを作用させることで、脱芳香族的アリル化が進行することを見いだした。ベンジルアミン類は、アミノ基を配向基とした芳香環のオルト位もしくはメタ位選択的な化学修飾ができるという利点をもつ。本研究では、このような位置選択的芳香環修飾の後に脱芳香族化を行うことで、置換基の位置が定まった脂環式化合物のモジュラー合成を達成した。次いで、これまで二種のみに留まっていた脱芳香族化体の誘導法の拡張を考え、ベンジル位に電子求引性のシアノ基を導入した芳香族シアノヒドリン着目した。芳香族シアノヒドリンの脱芳香族化体は不飽和ニトリルであり、求核剤を作用させることで簡便に置換基を導入できることがわかった。 先の研究では、求核剤がアリル求核剤限定的であった。本研究では、求核剤をアルキル求核剤(マロン酸エステル)へと拡張することにも成功した。すなわちパラジウム触媒存在下、ブロモアレーンとジアゾ化合物、そしてマロン酸エステルを反応させることで脱芳香族的三成分連結反応が進行し、対応する脱芳香族的アルキル化体が良好な収率で得られた。開発したこれらの手法は、一当量のベンゼン環を触媒的に脱芳香族化し、複雑三次元骨格の迅速合成を実現したものであり、脂環式化合物の新規合成戦略となると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、これまでのベンジル位結合切断を起点とする手法をさらに拡張し、ベンジルアミン類および芳香族シアノヒドリン誘導体の脱芳香族的アリル化の開発に成功した。これらの手法は、新奇脱芳香族化の開発のみならず続く生成物の誘導体化により脂環式骨格の迅速構築という合成的有用性も示すものである。さらに、本研究では当初、アリル基限定的であった求核剤の拡張が目的であった。これに対して、Pd-エノラート種を用いても同様の形式で反応が進行すると考え、ハロゲン化アリールの脱芳香族的三成分連結型アルキル化を見いだすに至った。これにより本脱芳香族化は、アリル求核剤に留まらず様々な求核種が導入できる可能性を秘めていることを示せた。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
π-ベンジル錯体を経由することでベンゼン環の骨格活性化を行い、種々の脱芳香族的官能基化の開発に成功した。今後は、これまでに蓄積された知見を基に、異なる戦略を用いて芳香環の骨格変換反応を開発する。既にヘテロ芳香環の開環型求電子的フッ素化反応を開発に着手している。反応の最適化に加え求電子剤の拡大を図る予定である。
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Research Products
(4 results)