2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J14917
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高畑 早希 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 民話 / 文化運動 / 戦争と児童文学 / 記憶 / 声 / 地方 / 木下順二 / 松谷みよ子 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は新型コロナウィルスの影響で、計画の一部について変更を余儀なくされたが、資料収集や成果報告はある程度継続して行うことができた。採用延長期間を含めた主要な研究実績は以下の3点である。 ①第二次民話運動を牽引した松谷みよ子の「戦争の民話」に関する業績を、絵本・現代民話集・児童文学の三つのジャンルに分けて考察した。戦争にまつわる民話について再話や創作が行われる際、立場の異なる複数の「証言」を〈声〉として重ねることによって戦争像の再構築を試みる方向性がある一方で、作家が民話の軸となる叙情的なメッセージを残すために〈声〉を消す問題(「消す作業」)が生じる事例を整理した。そのうえで、1960年代から1990年代にかけて松谷が制作したシリーズ「直樹とゆう子の物語」においては「消す作業」への抵抗が見られることを指摘し、その成果を「戦争記憶を民話として継承するということ――松谷みよ子等による第二次民話運動の頃を中心に」(坪井秀人編『戦後日本の傷跡』臨川書店、2022年)に発表した。 ②第1次民話運動の頃の主要な言説空間であった雑誌『民話』(未來社、1958年10月-1960年9月)を対象に、この雑誌に集った左翼系知識人が、アジア・太平洋戦争直後の日本において「民話」という概念をどのように立ち上げたかを4つの観点に分けて整理した。その成果は「一九五〇年代の民話運動――雑誌『民話』をめぐって」(『人文学フォーラム』5号、2022年3月)に発表した。 ③1970年代の山形と東京の運動の接触領域で生じた「民話公害」という問題について、福音館書店の「こどものとも」に収録された民話絵本と、山形県下で発行された謄写版雑誌『山形の民話』を対象に考察した。その成果は口頭発表ののち「民話絵本がもたらす波紋――一九七〇年代の山形と東京の民話運動をめぐって」(『東北文学の世界』31号、2023年3月)に発表した。
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Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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