2020 Fiscal Year Annual Research Report
The reconstruction and development of the late Northern Dynasties' reign under the influence of Northern institutional systems: focusing on stone inscriptions
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20J14931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田熊 敬之 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 墓誌 / 石刻史料 / 政治制度 / 中国古代史 / 魏晋南北朝 / 東魏北斉 / 北族 / 家政官 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は新型コロナウィルスの影響により、当初予定していた中国でのフィールドワークを実施することができなかった。ただしそれは想定の範囲内であり、本年度は北朝政治史・制度史・民族史に関わる諸文献や、新出石刻史料の収集・整理を継続して行い、それと並行して学会発表や論文執筆を行った。また、オンライン形式で国内外の研究会・学会にも積極的に参加した。 本年度進めた主な研究として、まずは北斉「恩倖」に関する論文の修正がある。本研究は皇帝の寵臣である「恩倖」という評価が一定程度『北斉書』のバイアスに由来することを指摘しつつ、石刻史料にみえる嘗食典御・主衣都統といった皇帝・権力者の食事・衣服等の家政面を掌る官職に注目し、その実態を究明したものである。本研究では、かかる官職群が任官者と皇帝・権力者との強固な結びつきや、任官後の急激な昇進を可能にする制度であったことを解明し、さらにはこうした制度の運用の背後には、胡漢民が中央権力へと接近し、門閥社会の障壁を乗り越えていこうとするダイナミズムがあったことを論じた。本論文は7月に『史学雑誌』に掲載された。 次に、北斉堯氏家族の墓誌を用いた研究を進めた。本研究は前述した論文の延長線上に位置づけられる事例研究であり、寒門の漢人である堯氏が、いかにして北斉の皇帝陵墓の周辺に家族墓を営むまでに地位を向上させていったのかを検討したものであり、12月にzoomで行われた中国出土資料学会で研究報告を行った。 その他、『水経注疏』研究会において担当箇所の訳注作成と口頭発表を数回にかけて行い、また『北斉書』現代語訳の翻訳・付録の作成も行った。これらの成果は今後出版がなされる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はフィールドワークを実施することができなかったが、ただしオンラインでの研究会・学会参加等を通して国内外の研究動向や成果に関する情報収集に努め、それと同時に文献・史料の整理や論文執筆で一定の進展がみられた。よって、当初の予定とは若干の変更があったものの、研究の進捗としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は日本や中国で関連する文献の出版が相次ぎ、次年度も継続して整理・精読を進めていく必要がある。本研究の要である墓誌史料についても、少なからず新史料の公開や出版がなされたため、目録の更新や関連する官職データの整理などを行っていくことになる。 次年度継続して進めていく予定の研究として、堯氏一族墓誌を用いた検討や、鮮卑語の侍衛とされる「庫真」の分析がある。その他にも、北朝から隋唐にかけて存在した北族的な影響がみられる政治機構や官職や、個別の墓誌を用いた関連研究を進めていく予定である。 次年度も新型コロナウィルスの影響により、中国でのフィールドワークや博物館での調査を行うのは非常に困難であると予測されるが、仮に年度末までに調査を行うことが可能になれば、北京・太原・安陽・洛陽・固原等の各地で石刻史料を含む新史料や文献を調査し、さらには現地研究者との学術的な交流を図っていく。
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