2020 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の細菌感染症に対する炎症メカニズムの解明およびその役割
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20J14958
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
森本 和月 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | ASC / E. pisicicida / A. hydrophila / メダカ / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内において炎症応答および自然免疫の活性化を誘導することで知られているアポトーシス関連スペック様カード含有タンパク質(ASC)に着目し、ASC変異メダカを用いることでE.piscicida感染時のASCを介した炎症応答の解明を行うことを目的とした。さらに、本研究では、細胞外増殖性細菌であるAeromonas hydrophilaとの比較を行うことで、E. piscicidaの細胞内感染時における宿主細胞の免疫機構を明らかにする。 まず、Cab系統メダカにおいて、asc遺伝子の同定を行った。その結果、Cab系統メダカには3つのasc遺伝子(asc1、asc2およびasc3)が存在することが明らかとなり、これらのASCはスペックを形成することを示唆した。メダカのすべての組織において、asc1の発現は、他のascよりも顕著に高かったことから、メダカのascの中でも、asc1遺伝子が主要な役割を担っていることが明らかになった。 次に、各細菌による浸漬処理を行ったASC-1変異メダカおよび野生型メダカの頭腎および腸管における好中球またはマクロファージ特異的に発現する遺伝子であるmpxおよびmpeg1の発現量は、E. piscicida感染後には両遺伝子ともASC-1変異メダカと野生型メダカ間で有意な差は見られなかった。一方で、A. hydrophila感染後には野生型メダカよりもASC-1変異メダカで有意に上昇した。さらに、細菌を貪食し、殺菌するために重要である活性酸素種(ROS)の産生量を比較した結果、両細菌感染時においてASC-1変異メダカは野生型メダカよりもROSの産生量が有意に低くなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでメダカにおいて1種類しか存在していないとされていたasc遺伝子が3つ存在することが明らかとなった。また、これまで使用していたASC変異メダカは3つのasc遺伝子のうち主要な役割を担っているASC-1変異メダカであることから、細菌感染時において、ASC-1が重要な役割を果たしていることを示唆した。 当該年度において、E. piscicida感染時のASC-1を介した炎症誘導機構を明らかにするために、E. piscicidaおよびA. hydrophila感染後の好中球およびマクロファージの動態をそれぞれの細胞に特異的な遺伝子の発現をASC-1変異メダカと野生型メダカで比較した。その結果、E. piscicida感染後には両遺伝子ともASC-1変異メダカと野生型メダカ間で有意な差は見られなかったが、A. hydrophila感染後には野生型メダカよりもASC-1変異メダカで有意に上昇した。さらに、ASC-1と好中球の活性化の関連性について明らかにするために、細菌感染時におけるROSの産生量の測定を行った結果、両細菌感染時においてASC-1変異メダカは野生型メダカよりもROSの産生量が有意に低くなった。これらの結果により、E. piscicida感染時において食細胞の遊走にASC-1は関与しないが、ASC-1は好中球の活性に関与することを示唆したことから、メダカASC-1を介した炎症誘導に関する解析は順調に進捗している。 当該年度において、病原菌暴露後のASC-1変異メダカの免疫関連組織におけるトランスクリプトーム解析を外部委託し、現在、解析を進めている。また、病原菌暴露後の活性型IL-1βの検出および魚類培養細胞株を用いた病原菌刺激後のASCの機能解明については、当該年度から継続して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、E. piscicida感染時におけるASC-1を介した炎症誘導についてより詳細に明らかにするために、病原細菌感染後のASC-1変異メダカにおける病理組織の比較を行う。細菌感染時のASC-1変異メダカにおけるトランスクリプトーム解析の結果から、重要な遺伝子群を明らかにすることで、細菌感染時におけるASCの詳細な役割を検討する。また、当該年度から継続し、ASC-1変異メダカを用いて病原菌暴露後の活性型IL-1βの検出および魚類培養細胞株を用いた病原菌刺激後のASC-1の機能解明について行うことで、E. piscicida感染時におけるASC-1を介した自然免疫活性化について明らかにする。 さらに、E. piscicida感染する変異型ASC-1がどのような役割を担っているのかを明らかにするために、ヒラメの野生型ASCおよび変異型ASCを含む発現ベクターをヒラメ培養細胞にトランスフェクションし、過剰発現させた後にE. tarda刺激を与えた場合の炎症性サイトカイン遺伝子などの発現を解析する。
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Research Products
(5 results)