2020 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける教師の力量形成論に関する研究―教師の知識論の系譜に着目して―
Project/Area Number |
20J14973
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
若松 大輔 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 教師の知識 / 力量形成 / 教師の専門性 / 専門職コミュニティ / 省察 / PCK |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の教師をめぐる政策および研究の近年の動向は、「学び続ける教員像」と「省察的実践家」に特徴づけられている。これらの動向で見過ごされていることは、何をどのように省察し学び続けるべきなのかという点である。そこで申請者は、この問いにこたえるため、アメリカを中心に展開されてきた教師の知識論の系譜に着目して研究を行っている。主として教師の知識論は、1980年代半ばにPCKを提唱したことで知られているリー・ショーマンの所論および彼に影響を受けた研究者の所論として展開されてきた。 この問題圏に関わる先行研究では、大きく分けて3つの研究が行われてきた。第1に教師の知識研究のレビューおよび検討、第2にPCK概念を用いた実証研究、第3にショーマンの所論の研究である。第1の研究では、第3の研究の成果を踏まえつつ、ショーマンの知識論とはPCKのことであるという前提に立ち、近接の研究群の中に位置づけてきた。この見方を反映させて第2の研究として、各学校種および各教科の教師たちがどのようにPCKを保持あるいは成長させていくのかに関する実証的な研究が進められてきている。第3の研究は、ショーマンの知識論から派生した教師のコミュニティ論や高等教育におけるSoTL論を部分的に検討してきた。 これらの状況を踏まえて、申請者は、ショーマンの所論および彼に影響を受けた研究を包括的に検討して、知識論の系譜における専門職としての教師の力量形成の可能性および論点を浮き彫りにすることを目指している。本年度は、ショーマンによる教師のコミュニティ論を、これまでにも注目されてきた2004年の枠組みだけではなく、その前史やほかのコミュニティ論とのかかわりの中で総合的に検討した。また、ショーマンに影響を与えたジョセフ・シュワブの未公刊資料を含めて資料収集を行った。次年度以降に、これらの資料を用いて研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画通り次のような論文および記事の執筆を行うことができたためである。 まず主たる研究としてリー・ショーマンによる教師のコミュニティ論を検討して論文にまとめ投稿した。また、アメリカの議論を相対化しつつ、日本への示唆を考察するために、日本における教師教育改革や教師による授業づくりを検討した論文も公刊した。そのほかにも、PCKにおけるpedagogyの概念を検討するために、アメリカとは文化を異にする地域で展開された論争的な「実践におけるペダゴジー(PiP)」概念の分析および紹介も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、教師の知識論の系譜において最大の論点であろう認識と行為の関係を読み解くことを計画している。とりわけ1980年代半ばにリー・ショーマンのもとでPCKの基礎研究を行いつつも、近年は行為に基づいた教師教育論を提唱しているパメラ・グロスマンの所論に着目して研究を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)