2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J15045
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
古川 友寛 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 行列模型 / 弦理論 / ブレーン / 例外群 |
Outline of Annual Research Achievements |
素粒子標準模型を超える統一理論としてM理論が期待されている。M理論の対象とする物体の1つにM2ブレーンと呼ばれる膜状物体がある。そしてABJM理論はM2ブレーンを記述する理論であり、この理論は高い対称性により局所化法を通じて、多重積分で記述されるABJM行列模型にすることができる。そして、この行列模型はP^1×P^1の構造をもつスペクトラル演算子で特徴づけられる。また、系の対称性を拡張する意味でのABJM行列模型の拡張も存在する。このようなABJM行列模型やその拡張を調べることは、統一理論として期待されるM理論の理解に繋がると期待できる。ABJM行列模型の拡張に対して2021年度に私が行った研究は、受入研究者である森山翔文氏(大阪市立大学、NITEP)と中西智暉氏(大阪市立大学)との共同研究[Furukawa, Moriyama, Nakanishi, arXiv: 2010.15402 [hep-th]]である。この研究の大きな結果は、IIB理論と呼ばれる超弦理論におけるブレーン配位の、今まで知られていなかった局所的な変換をABJM行列模型の拡張の観点から提案したことである。先行研究[Kubo, Moriyama, JHEP 12(2019)101]において、ブレーン配位と、行列模型を特徴付けるスペクトラル演算子の対応付けから、スペクトラル演算子のもつ例外Wely群をブレーン変換と解釈することで、よく知られたHanany-Witten変換の他に、新たなブレーン変換が現れることが明らかになっていた。そして我々は、先行研究よりも複雑な構造をもつスペクトル演算子に対して同様のブレーン変換を見出し、さらに進んで新たなブレーン変換の局所的な理解を得ることもできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の研究目的は、2次元戸田格子階層におけるABJM行列模型の特徴を明らかにすることである。その目的に向けた研究として、ABJM行列模型の閉弦開弦対応についての研究は順調に進んでおり、現在論文執筆中である。また、ABJM行列模型の拡張についての研究として、2019年度に進めていた研究である森山翔文氏(大阪市立大学)と杉本裕司氏(中国科学技術大学)との共同研究は雑誌への掲載が決定した。さらに2020年度には、森山翔文氏と中西智暉氏(大阪市立大学)との共同研究も行い、この研究については現在雑誌投稿中である。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、ABJM行列模型の閉弦開弦対応に関する研究が進行中である。閉弦開弦対応は、ABJM行列模型の相関関数が満たす対応関係であり、ABJM行列模型と2次元戸田格子階層を対応づけるときには、この対応関係が2次元戸田格子階層の解がもつパラメータに対して制限を与えると予想している。現在研究中の閉弦開弦対応に関する結果を論文にまとめ終えた後は、閉弦開弦対応が可積分系に与える寄与を明らかにする研究に取り掛かる計画である。この研究により、ABJM行列模型のもつ可積分構造が、より明らかになると期待できる。
|