2020 Fiscal Year Annual Research Report
溶連菌による天然変性蛋白質を介した宿主ホスホイノシタイドシグナル攪乱機構の解明
Project/Area Number |
20J15080
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤 博貴 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | A群レンサ球菌(溶連菌) / ホスホイノシタイド / 天然変性領域 / NAD-glycohydrolase |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、A群レンサ菌(Group A Streptococcus; GAS)の分泌毒素であるNAD-glycohydrolase (Nga)を研究対象とし、Ngaに推定される天然変性領域(intrinsically disordered region; IDR)がNgaの宿主リン脂質ホスホイノシタイドに対する結合能に与える影響を明らかにすることを目的とする。 本年度では、まず大腸菌で発現させた組換えNgaによるホスホイノシタイドへの結合を検討した。GSTタグの融合タンパク質として発現・精製したGST-NgaとIDR変異体によるホスホイノシタイドへの結合をPIP strip assayにより検討した結果、NAD分解活性を保有しない変異体では、PI5PやPI(3.5)P2への結合能が下がることが示唆された。しかしながら、リポソーム共沈法を用いた、タンパク質・脂質の相互作用の定量的評価には至らなかった。また本年度では研究を進めていく中で発見された問題を解決させるための検討を行った。大腸菌を用いた組換えNgaの発現系では、Ngaの活性を阻害するアンチトキシンSniとの共発現系を採用している為、精製時にアンチトキシンであるSniが混入する可能性が高く、Ngaによる脂質結合能にSniが影響することが懸念される。加えて、脂質結合能を有する大腸菌由来のタンパク質が精製時に夾雑して、ホスホイノシタイドへの結合に影響を及ぼす可能性も考慮して、無細胞発現系を用いてNga単独での発現が可能かを検討した。その結果、大腸菌の無細胞発現系においてNgaの発現で確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではNgaに推定される IDRがNgaの宿主リン脂質ホスホイノシタイドに対する結合能に与える影響を明らかにすることを目的とする。大腸菌の異種発現系で発現・精製した組換えNga発現体とNAD分解活性変異体のホスホイノシタイドへの結合能の変化が示唆されたものの、IDR変異体での評価までは至らなかった。さらに採用している大腸菌発現系由来の問題点が確認され、その対策に時間を割いたため、本来の計画より「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は無細胞系で発現させたNgaの精製条件を検討し、組換えNgaだけでなく無細胞発現系で得られたNgaによるホスホイノシタイドへの結合能の評価を行う予定である。この際に、PIP strip assayの他に、リポソーム共沈法を用いて脂質との相互作用を定量的に評価する。さらにNgaとの相互作用する宿主タンパク質を同定することを目的として、蛍光タンパク質であるmCloverとの融合タンパク質を一過的に発現させ、免疫沈降の後、ショットガンプロテオミクスを実施する予定である。得られた結果を論文としてまとめ、国際誌に投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)