2020 Fiscal Year Annual Research Report
家族主義福祉レジーム諸国の育児負担軽減策の探究:育児実践と政策策定過程の両面から
Project/Area Number |
20J15102
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大木 香菜江 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 福祉レジーム論 / 家族主義レジーム / 東アジア福祉国家論 / 福祉オリエンタリズム / 第四のレジーム論 / 脱家族化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本やイタリアといった家族主義的性質の強い諸国における、家族の育児負担を軽減する方策を制度と現場の双方向から探求することを目的としている。 これまでの研究では、家族の育児負担が特に過重とされる家族主義福祉レジーム諸国である日本とイタリアの育児政策についての比較分析を行ってきた。ここから得られた結果では、これまで家族主義的性格が強く、福祉国家が脆弱であるとされる両国が家族負担を軽減する取り組みを行っていることを明らかにした。この知見はこれまでの先行研究に新たな視点を加えるものであったが、以下二点において、さらなる分析を進める必要があった。そこで本年度は以下二点についての研究を実施した。 一点目は、イタリアの育児政策の政策策定過程や政策が家族のケアの現場に与える影響を明らかにすることである。本来的には、イタリアでの研究者等との意見交換や、現地調査を本年度中に実施する予定であったが、コロナウィルスの影響で国外からの渡航が禁じられる措置が取られたため、渡航を断念した。また、コロナ禍のイタリアの家族のケア現場は常時とは異なる様相を呈してきている状況にもあるため、来年度に現地で調査を行うに際しての予備調査として現地の新聞記事でコロナ禍の家族や育児について報道するものの収集を行った。 二点目は、福祉国家比較研究そのものの在り方を根本的に見直す研究である。具体的には、福祉国家比較研究全体が北欧中心主義のもとに進められていて、その偏向性のために福祉後進国がある一定のバイアスのもとに分析が行われることを批判的に論じる研究を行った。研究の方法は、Esping-Andersenを始めとする福祉レジーム論と、これに対抗する形で登場した「第四のレジーム論」を扱う研究の議論動向を分析した。そして、これらの研究動向の中にオリエンタリズムやセルフオリエンタリズムが発見される点を指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスの影響を受け、予定していたイタリアでの調査が延期となった。そのため、現地で収集予定であった資料の入手ができず、それらの分析を本年度中に行うことはできなかった。今後の状況次第ではあるが、来年度に渡航を延期する形で研究計画を進めるなど柔軟に対応することとする。 一方で、福祉レジーム論における「第四のレジーム論」の理論的分析など、国内で可能な研究を進める形でその成果を論文投稿や研究会報告を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスの感染拡大状況によるが、国外渡航がかなう場合は現地での資料収集や研究機関との意見交換を予定している。国内のみでの研究となる場合は、福祉レジーム論や東アジア福祉国家論、脱家族化論にかんする知見を深め、研究報告を行う予定である。
|