2020 Fiscal Year Annual Research Report
機械学習技術でせまる低密度核物質におけるアルファ凝縮相
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20J15126
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲葉 健斗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | アルファ凝縮状態 / 荷電粒子識別 / 信号波形弁別 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、24Mg 原子核におけるアルファ凝縮状態探索実験を行なって、低密度核物質の物性を明らかにすることを目標としている。アルファ凝縮状態は、複数の低エネルギーアルファ粒子へ崩壊すると理論的に指摘されている。アルファ凝縮状態の測定のためには、様々な粒子の中から低エネルギーアルファ粒子を精度よく識別することが鍵となる。 本年度は、実験に使用する予定の Si 半導体検出器および信号波形弁別法 (PSD 法) による粒子識別技術の開発を行なった。神戸大学タンデム加速器施設および東北大学ラジオアイソトープセンターにおいて Si 検出器の性能評価試験を行なった。Si 検出器への印加電圧、信号波形の前置増幅器、Si 検出器の種類など測定条件を様々に変更して、最も良い粒子識別能を達成することのできる測定条件を決定した。信号波形に対するデジタルフィルタを開発することで、陽子とアルファ粒子を 2 MeV のエネルギーまで精度よく識別することに成功した。さらに、信号波形弁別に機械学習技術を取り入れることで、陽子とアルファ粒子の識別率は 95% にまで向上した。 当初の予定では、2021年度前半に南アフリカの iThemba LABS で 24Mg におけるアルファ凝縮状態の探索実験を行う予定であった。しかし、COVID-19 の流行により、海外の研究所において実験を実施できる見通しが立たない。そこで、24Mg におけるアルファ凝縮状態探索実験の準備と並行して、過去に取得された 13C 原子核におけるアルファ凝縮状態探索実験のデータ解析を行なっている。データ解析の結果、13C におけるアルファ凝縮状態の存在を示唆する結果が得られた。現在は、実験結果と 13C に対する様々な原子核構造計算との比較を行なっており、投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験遂行のためには、信号波形弁別を用いた粒子識別法を確立することが最も重要となる。前年度の機械学習技術を用いた粒子識別法の開発によって、95% の高い識別率で 2 MeV 以上の陽子とアルファ粒子を識別することに成功している。また、実験に必要な検出器群や設置架台などの準備も問題なく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、南アフリカの iThemba LABS にてアルファ非弾性散乱を用いて 24Mg 原子核におけるアルファ凝縮状態探索実験を行う予定であった。しかし、COVID-19 の影響により、海外の研究所において実験を実施できる見通しが立たない。そこで、実験計画を変更して、12C + 12C 共鳴散乱を用いて 24Mg 原子核のアルファ凝縮状態の探索を行う。共鳴散乱を用いた測定は、日本原子力開発研究機構のタンデム加速器において実施可能である。シミュレーションを行うことで、共鳴散乱を用いた実験においても、当初の目標である統計誤差 2% でのアルファ凝縮状態の測定を行うことができることを確認している。前年度の研究で開発した機械学習による粒子識別技術を用いて実験データの解析を行い、アルファ凝縮状態の励起エネルギー及び崩壊様式を明らかにする。得られた研究成果は学術論文として公表する。 また、本研究と並行して行なっている、 13C 原子核におけるアルファ凝縮状態探索実験のデータ解析を完了させる。現在は得られた結果を論文にまとめている最中であり、今年度前期に論文を投稿することを目指す。
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