2020 Fiscal Year Annual Research Report
高効率高選択的直接変換を可能とする多元金属クラスター触媒の創製
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20J15181
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小泉 宙夢 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 多元金属クラスター / サブナノ粒子 / プロピレン / プロピレンオキシド / エポキシ化 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「プロピレンオキシドの高効率高選択的直接合成を可能とする多元金属クラスター触媒の創製」である。従来の触媒とは異なる活性種を形成することが期待される多元金属クラスターを駆使して、これまでは不可能であった「高効率」と「高選択率」の両立を狙う。具体的には、気相酸化反応でのプロピレンオキシド直接合成を実現すべく、プロピレン転化率およびプロピレンオキシド選択率ともに高い値を示す多元金属クラスター触媒の開発に取り組んでいる。本年度は下記(1)~(2)を実施した。 (1) 酸化銅クラスターによるプロピレンオキシドの生成 鋳型高分子を用いて酸化銅クラスターを液相にて合成し、その後シリカに担持することでシリカ担持酸化銅クラスターを調製した。得られたシリカ担持酸化銅クラスターをプロピレン気相酸化の触媒に適用したところ、目的生成物であるプロピレンオキシドが生成することが確認された。これより、クラスターの構成元素として銅が有効であると判断した。また、プロピレンオキシド選択率を向上すべく、銅と貴金属であるパラジウムを組み合わせた。酸化銅―パラジウム二元クラスターを合成し、その触媒性能を評価したところ、プロピレンオキシドは生成しないことが判明した。銅に対するパラジウムの比率が高いために相乗効果が発現しなかったことが考えられる。 (2) 白金―ビスマス二元クラスターによる活性酸素種の形成 当初の研究計画では予定していなかったが、白金―ビスマス二元クラスターが、プロピレンオキシド生成に有効である活性酸素種を形成することをDFT計算より見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画・方法に従い、「プロピレンオキシドの高効率高選択的直接合成を可能とする多元金属クラスター触媒の創製」に向けて、「多元金属クラスターの構成元素の選定」および「多元金属クラスターの組成依存性の検討」に取り組んだ。炭化水素の酸素酸化に有効である酸化銅クラスターを、高い熱的安定性を有するシリカに担持して不均一系触媒を調製した。シリカ担持酸化銅クラスター触媒をプロピレン気相酸化に適用したところ、目的物であるプロピレンオキシドが生成することを見出した。クラスターの構成元素として銅が有効であり、担体としてはシリカの他にチタニアも有効であることを見出しており、当初の研究計画通りに進んでいる。 一方、プロピレンオキシド選択性の向上を狙ったシリカ担持酸化銅―パラジウム二元クラスター(銅:パラジウム = 4:3)では、プロピレンオキシドは生成しないことが判明しており、今後は種々の銅含有多元金属クラスターの合成および触媒性能評価に取り組む必要がある。 活性酸素種の電子密度に着目してDFT計算を行い、白金―ビスマス二元クラスターが分子状酸素を活性化してプロピレンオキシド直接合成に有効な活性酸素種を形成することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
「精密に設計された多元金属クラスター触媒の開発」および「さらなる高難度触媒反応への応用」に取り組む。 銅と組み合わせる金属種を遷移元素である貴金属から典型元素まで拡張して、銅が有するプロピレンオキシド生成能の向上を図る。貴金属としてイリジウムや白金など、典型元素としてスズやビスマスなどを検討し、クラスターと酸素との親和性を精密に制御することで、触媒性能を向上させる。 また、過剰酸化の抑制や過酸化物中間体の形成の観点から、水蒸気を導入しながら触媒反応を実施することにも取り組むことでプロピレンオキシド選択率を向上させる。 DFT計算より、ビスマスに対する白金の比率が低い白金―ビスマス二元クラスターがプロピレンオキシド選択合成に有効であることから、当該クラスターの合成に取り組む。担体であるシリカ上の分散性が低い場合、水素雰囲気下加熱処理したアルミナを担体として用いる。また、プロピレン気相酸化の前処理条件中の酸素濃度や温度を振ることで、白金とビスマスの酸化状態をそれぞれ変化させ、各元素の酸化状態とプロピレン転化率やプロピレンオキシド選択率との関係性を把握する。 より直接的な変換反応の実現を目指し、開発した触媒をプロパンからのプロピレンオキシド直接合成に適用する。プロパンからのプロピレンオキシド直接合成にはプロパン脱水素化反応が含まれる。開発した触媒により脱水素化反応が進行する場合、そのまま酸素酸化まで検討する。脱水素化能が低い場合、脱水素化に有効である元素を組み合わせて脱水素化能を付与する。
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Research Products
(3 results)