2020 Fiscal Year Annual Research Report
統計的極値理論に基づく定量的リスク管理:新たなリスク測度推定法の研究
Project/Area Number |
20J15188
|
Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
貝淵 響 総合研究大学院大学, 複合科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
|
Keywords | 定量的リスク管理 / 極値理論 / 時系列解析 / 金融リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題である統計的極値理論に基づく新たなリスク測度推定法に関する論文を執筆した。今現在投稿中(プレプリントはアーカイブに投稿済み)である。研究の概要は以下の通り:分散不均一な変動を示す金融資産の収益率データに対するリスク管理では、分散不均一性は時系列モデルで説明し、モデルの標準化残差に統計的極値理論を援用する方法が2000年前後に確立している。極値理論というとき、既存研究は一般パレート分布のあてはめに頼る方法であったが、本研究課題では、裾指数推定量のバイアス補正を行うセミパラメトリック手法に基づくリスク管理を提唱している点が新しい。また、実データを用いたバックテスティング(模擬予測に基づく信頼水準の検証)の観点から、提案手法が推定精度や計算コストにおいて既存の各手法より優れているということが解析から示された。 招待されていた国際学会(EcoSta2020)はコロナの影響で2021年に延期になり、学会発表は国内発表2つに留まった。計画実施計画に記載した通り2020年度統計関連学会連合大会(オンライン)に参加し、産業界を含む様々な分野で活躍できる数学と統計の力を認識する為、日本数学会の交流会にも参加した。異分野・異業種研究交流会では、数学専攻の博士課程学生をはじめとする若手研究者や産業界を含む異分野の研究者と交流を持つことができたのは良かったと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の研究計画で述べた、既存のリスク分析指標の問題点を解消する統計量の一つであるエクスペクタイル(expectile)を用いての新たなリスク測度の考案とその推定法の研究は進行中である。エクスペクタイルとは期待値と分位点を合わせたような概念と言えるが、エクスペクタイルだけに留まらず、数理ファイナンスにおいて重要なリスク測度である期待ショートフォールについてもバックテスト法を模索中である。提案する推定法が金融リスク管理にもたらす含意やメリットを、実データを用いてバックテスティングの観点から検討するという課題に関しては、分位点をリスク尺度に取った場合は終わったが、期待ショートフォール、エクスペクタイルに尺度を変えた結果を導くところまでは研究は進まなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、金融機関のリスク管理実務で最も標準的なバリューアットリスク(VaR)と数学的な性質では優れているが推定法が自明ではないエクスペクタイル(expectile)の新たな推定法の提案することであった。進捗状況が少し遅れてしまった原因ではあるが、もう一つのリスク管理実務において重要なリスク測度、期待ショートフォール (バリューアットリスクでは反映されない超巨大リスクの影響を反映する)についても論文にした推定法をベースに推定方法を提案する。 具体的には、VaRを推定する際に用いた新たなリスク測度推定法をexpectileと期待ショートフォール推定法に活用する。VaR(分位点)とexpectile(または期待ショートフォール)の漸近的同値性と裾の重い分布の性質を用いて、VaRを推定する際に用いたGARCH-UGH法をexpectile(または期待ショートフォール)推定法に変換する。推定法の性質を確認するために、条件付分散不均一性を無視した無条件のもとシミュレーションを行い、提案手法と既存の各手法を比較する。また、その推定法が金融リスク管理にもたらす含意やメリットを、主に実データを用いてバックテスティングの観点から明らかにする。成果の公表は、統計関連学会連合大会とオンラインで開催される国際学会EcoSta2021で行う。また、国際的な専門誌であるEconometrics and Statisticsへの投稿を検討する。
|
Research Products
(3 results)