2020 Fiscal Year Annual Research Report
時差ぼけ症状におけるバソプレシン受容体を介した臓器間ネットワークの役割
Project/Area Number |
20J15408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 洋太 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 概日時計 / 時差ぼけ / アルギニンバソプレシン |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上のほとんど全ての生物は、約24時間周期で自律的に振動する概日時計を有しているため、地球の自転に伴う環境変化に適応できる。哺乳類における概日時計中枢は脳の中の視交叉上核 (Suprachiasmatic nucleus, SCN) であり、概日時計によって体温、ホルモン分泌、遺伝子発現など生物の様々なリズムのピーク位相は生理機能が最も効率よく発揮されるよう制御されている。近年、交替制勤務や生活の夜型化により体内時計と環境の明暗周期が慢性的に乖離状態になる「社会的時差ぼけ」とそれに伴う生活習慣病などの疾病が問題となっている。この中で申請者らは、SCNに発現する主要なペプチドであるアルギニンバソプレシンの受容体が時差症状に寄与していることを明らかにした。そこで申請者はバソプレシン受容体を糸口に時差症状を根本的に是正することを目指し、時差への創薬研究の基盤となる時差の分子メカニズムの解明を計画した。これまでに申請者はSCNに発現するバソプレシン受容体が時差症状に寄与しているかを明らかにするために、SCNでバソプレシン受容体遺伝子を欠損したマウスを作出した。このことから、時差症状を示さないマウスのSCNにて発現変動する遺伝子を網羅的に解析することが可能となった。今後、時差の分子メカニズム解明に向けて、時差症状がSCNに与える影響を評価できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時差の分子メカニズムを解明するためには、時差症状を示さないマウスが必要不可欠である。今回申請者は、SCNでバソプレシン受容体遺伝子を欠損したマウスを作出することに成功した。これにより、マウスを時差環境下に曝し、時差症状がSCNに及ぼす影響を網羅的に解析することが可能となり、時差の分子メカニズム解明につながると考えられるため、計画は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に作出した時差症状を示さないマウスを用いて、時差環境がSCNに発現変動する遺伝子に及ぼす影響を野生型マウスと比較する予定である。さらにこの解析から見出した遺伝子の変異マウスも新たに作製し、時差の分子メカニズム解明を目指す。
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