2020 Fiscal Year Annual Research Report
SiC MOSFETの高移動度動作を可能にする革新的な酸化膜の低温形成技術の開発
Project/Area Number |
20J15538
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土井 拓馬 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / MOS型電界効果トランジスタ / 界面準位密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
4H-SiCパワーMOSFETの省電力化に向けて,絶縁膜/4H-SiC界面の界面準位密度の低減が必須である.理論予測によれば,絶縁膜/4H-SiC界面に形成されたSiCxOy構造が界面準位の起源であると予測されており,絶縁膜形成時の基板酸化抑制が重要であると考えられる.そこで本研究では,Al2O3絶縁膜堆積のための新手法「In-situ金属薄膜酸化(metal layer oxidation, MLO)法」を開発した.本手法は,極薄の金属Alを堆積し室温酸化する,という手順を繰り返しAl2O3層を形成するものである.4H-SiC基板上にMLO法によりAl2O3を形成し,その界面構造および界面準位密度について評価を行った. X線光電子分光法により界面構造を評価した.MLO法を用いて形成したAl2O3/4H-SiC界面での基板酸化物の形成は検出限界以下であり,従来手法に比べて抑制できることが分かった.また,界面準位密度は10^12 cm-2eV-1以下であり,一般に広く用いられている熱酸化SiO2/4H-SiC界面に比べると1桁以上低い値が達成された. 更に,SiCxOy構造の存在が界面準位に与える影響をより詳しく調べるため,意図的に厚さをコントロールしたSiCxOy層を形成した基板上へのMLO-Al2O3層形成も行った.基板表面を一層以上のSiCxOyが被覆している場合,界面準位密度が大きくなることが分かった.また,フッ酸を用いてSiCxOy層を完全にエッチングすれば,清浄表面上に形成した場合と同程度の低界面準位密度が得られることも分かった.これらの結果は,確かにSiCxOy層の存在が界面準位密度増大に寄与していることを示唆しており,基板酸化を極力抑えることで,高品質界面を実現できるという指針を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私は,シリコンカーバイドを用いたパワーデバイスの省電力化に向け,高品質MOS界面形成手法の開発に注力した.絶縁膜堆積の際に基板酸化をできる限り抑制することが重要と考え,MLO法を開発した.これにより,従来手法に比べて基板表面の酸化を抑制し,更に界面準位密度の10^12 cm-2eV-1以下への低減を達成した.この結果は,MOS型電界効果トランジスタの高移動度動作を可能とする重要な結果である.これらの成果を1報の雑誌論文として発表した. 加えて,高品質MOS界面の維持には,デバイス全体での総合的な要素技術開発が必要であると考え,低温でのオーミックコンタクト形成技術の開発にも取り組んだ.仕事関数の低い金属を電極に用いても,ショットキー障壁高さ(SBH)が0.5 eV以上となってしまう点に課題を見出し,金属/4H-SiC界面への極薄絶縁膜挿入を試みた.これにより,0.36 eVという極めて低いSBHを達成した.これらの成果を3件の国内学会で発表した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果として,界面準位の低いAl2O3/4H-SiC界面の形成手法の開発と,低いショットキー障壁高さを有する金属/4H-SiC界面の形成を達成した.これらの手法を用いたデバイスの作製および動作実証を行っていく予定である.更に,低温プロセスのみで作製した場合・高温プロセスを経た場合のデバイス特性を比較し,MOS界面において移動度を制限している要因を明らかにする.
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