2020 Fiscal Year Annual Research Report
筋タンパクの分解と合成を制御する新規分子機構の解明
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20J15551
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 麻未 名古屋市立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、筋特異的なオートファジー基質の欠損マウスを作成し、オートファジー基質とそのリン酸化の増加は抗酸化物質の産生に重要であり、酸化ストレスの増大が要因となる筋量の減少を抑制することを報告している。また近年では、オートファジー基質のリン酸化は、オートファジーの調節や抗酸化物質の産生の他、タンパク合成経路も制御する可能性が報告されており、その多彩な機能が着目されつつある。しかしながら、骨格筋におけるオートファジー基質のリン酸化が筋タンパクの分解と合成のバランスを調節し筋量を制御するかは明らかではない。そこで本申請では、骨格筋量を制御する因子としてオートファジー基質のリン酸化に着目し、その重要性の立証を目的とした。この目的を達成するために、我々が樹立した筋特異的オートファジー基質の欠損マウスに加え、オートファジー基質のリン酸化が恒常的に誘導されている筋特異的オートファジー基質のトランスジェニックマウスを作成し、筋タンパクの合成と分解に対するオートファジー基質のリン酸化の役割を解明することを目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請1年目は、実験1:筋特異的オートファジー基質のトランスジェニックマウスの作成と系統確立、実験2:作成したトランスジェニックマウスの表現型の解析、実験3:作成したトランスジェニックマウスの細胞内タンパクの発現変動の評価を実施した。 実験1では、トランスジェニックマウスが正確に作成されたことを確認するために、骨格筋とその他の複数の臓器のオートファジー基質の発現を評価し、オートファジー基質が筋特異的に増加していることを確認した。作成したマウスは増加が多い系統と増加が少ない系統の2系統を繁殖させ、系統確立を行った。 実験2では、実験1にて作成したそれぞれのマウスの体重や筋重量などの表現型を解析した。解析には、10-12週齢の作成したマウスと同腹子の野生型マウスを使用した。マウスは、体重の他、遅筋優位なヒラメ筋や遅筋と速筋が混在した足底筋や腓腹筋、速筋優位な長趾伸筋を採取して筋重量を測定した。その結果、現時点において野生型マウスとトランスジェニックマウスの間には体重や筋重量に違いは観察されなかった。 実験3では、実験1にて作成したマウスの足底筋を用いてオートファジー基質のリン酸化や抗酸化物質の発現変動を評価した。その結果、作成したマウスでは、オートファジー基質の複数の部位のリン酸化が促進していた。また、複数の抗酸化物質は有意に増加しており、酸化ストレスが軽減していた。これらの現象は、オートファジー基質の増加が多いい系統ほど顕著に観察されていることから、骨格筋におけるオートファジー基質が筋の抗酸化機能を向上し、酸化ストレスを軽減することを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験1:筋タンパクの分解と合成に対するオートファジー基質の役割の解明、実験2:筋萎縮に対するオートファジー基質の役割の解明を実施する。 実験1:筋タンパクの分解と合成に対するオートファジー基質の役割の解明 実験1では、筋特異的オートファジー基質欠損およびトランスジェニックマウスの筋タンパクの分解と合成機能を解析する。タンパクの分解にはオートファジーに関連するLC3やBeclin-1などを測定する。また、オートファジーのフラックスアッセイも実施する。タンパクの合成にはmTORの活性化指標であるp70S6Kや4E-BP1のリン酸化を測定する。 実験2では、筋萎縮に関する実験は筋特異的オートファジー基質欠損およびトランスジェニックマウスにデキサメサゾン投与を実施し、筋萎縮に対するオートファジー基質の役割を解明する。筋肥大に関する実験は、腓腹筋切除による代償性筋肥大を実施する。作成したモデルマウスは、最大筋力の測定や体重、遅筋優位なヒラメ筋や速筋優位な長趾伸筋、遅筋と速筋が混在した足底筋や腓腹筋などの骨格筋を採取して重量を測定し、一部の骨格筋は組織標本の作成に使用する。組織標本は薄切し、蛍光免疫染色にて染色し、筋線維径を測定する。また、採取したその他の骨格筋は、オートファジー基質の発現変動やリン酸化、抗酸化物質の発現変動を測定する。さらに、実験1にて評価したタンパクの分解と合成に関連する因子を測定する他、筋萎縮マーカーを測定し、筋肥大はピューロマイシン投与によるタンパク合成能を測定し評価する。 以上に記載した2つの実験項目を実施し、2系統の遺伝子組換えマウスを用いて骨格筋のオートファジー基質が筋タンパクの分解と合成の両面から骨格筋量の維持を制御するか検証する。
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