2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J15577
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
李 晨 京都大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 意思決定論 / 不確実性下の意思決定 / パレート効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
将来を完全に予測し得ない現実を直視し、個人の意思決定行動を定式化するのは本研究の最も重要な目的であった。理論モデルを裏付けるために実験的検証を計画していたが、新型コロナウイルスの流行拡大により余儀なく中止され、次年度へ持ち越すこととした。また、意思決定論や行動経済学といった、本研究に関わる経済学分野の先端研究は欧米諸国の研究者によって取り組まれているため、World Congress of the Econometric Societyなどの国際学会への参加で海外の研究者と交流し、本研究を発展させることを予定していたが、これも実現できなかった。 研究実施計画に記載された内容について計画通りの結果は得られなかったが、今年度は違う側面から非期待効用個人からなる市場の効率性について理論的に考察した。具体的には、個人は所与された効用関数を最大化するように意思決定すると仮定せず、データとして得られやすいと思われるリスク選好のみが与えられたときに、市場の効率性を測定する適切な指標を提案した。リスク選好のみを利用することで個人の確率予測問題を回避し、既存の非期待効用意思決定モデル、及び本研究の開始時点で目指した不完全な予測を前提とした個人意思決定モデルの両方を分析することができる。一方、市場の分析者は市場状況に関する確率予測ができ、予測の結果は任意の確率の集合で与えられるとする。 今年度は上述した個人のリスク選好と分析者が信じる確率予測の集合が与えられたとき、ロバスト問題に直面する分析者にとってのパレート効率性を表現する新たな公理を提示した。また、提案した新しい公理は個人のリスク選好と与えられた確率予測の集合からMaxmin Expected Utility型の社会(市場)厚生関数を導くための唯一の公理であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予想外の事態が発生したため、研究開始時点の計画を完全に遂行することはできなかったが、市場分析に関する理論研究は順調に行われた。効率性を測るロバスト指標は、市場分析のみならず、非期待効用を前提とした社会選択理論や選好集計に着目する意思決定理論についての理解を深めるためにも有益である。また、対面・オンラインのコンファレンスで研究成果を報告し、研究成果を積極的に発信した。以上のことから、本研究は当初の計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
出来る限り今年度で実現できなかった研究計画を遂行する。具体的には、不完全な予測を前提とした個人の意思決定行動を定式化し、得られた理論モデルを実験的検証の視点から検討する。新型コロナウイルスの流行状況で実行不可能と判断した場合には、今年度の進展を受けて、引き続き非期待効用の個人からなる市場の理論分析に取り組む。
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