2020 Fiscal Year Annual Research Report
股関節回旋運動における股関節内転筋群の形態および機械特性に着目した筋機能解明
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20J15597
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
加藤 拓也 札幌医科大学, 保健医療学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 股関節内転筋群 / 弾性率 / エラストグラフィ / 股関節角度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、超音波剪断波エラストグラフィを用いて、ヒト生体における股関節角度変化に伴う長内転筋の受動張力を推定するための基礎実験を行った。組織性状がヒト生体に近いThiel法固定献体9例9肢の長内転筋を用いて、超音波剪断波エラストグラフィで計測される弾性率と受動張力関係を検討し、長内転筋の弾性率と受動張力との間には強い線形関係があることが明らかとなった(R2 = 0.982-0.989, P < 0.01)。以上より、ヒトの長内転筋において、超音波剪断波エラストグラフィを用いた弾性計測から受動張力を約98%説明でき、筋伸長に伴う受動張力の変化を推定評価できる可能性が示唆された。また、超音波剪断波エラストグラフィを用いて随意的な股関節運動時におけるヒト生体の長内転筋の活動張力を推定するため、股関節屈曲・伸展運動時における長内転筋の弾性率と股関節屈曲角度の関係を検討した。健常男性17名を対象とし、等尺性股関節屈曲運動時の各収縮強度(0%, 25%, 50%, 75%MVC)における長内転筋の弾性率を屈曲0°、40°、80°にて計測した。また、17名のうち7名は、等尺性股関節伸展運動時における長内転筋の弾性率を屈曲運動時と同様の課題にて計測した。各収縮強度において屈曲角度間における長内転筋の弾性率を比較するためフリードマン検定を用いて検討した。その結果、屈曲運動において、収縮強度に依らず、屈曲0°における長内転筋の弾性率は、屈曲40°および80°と比較して有意に高値を示した。一方、伸展運動では、75%MVCにおいて屈曲角度間で有意な差を認めなかった。以上より、股関節屈曲運動における長内転筋の活動張力は、屈曲角度に依存し、屈曲0°にて高まる可能性が示唆された。これらの知見は、股関節回旋に伴う股関節内転筋群の受動張力および活動張力の解明に繋がる基盤情報になりうると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屍体を用いた股関節内転筋群の形態特性を解明を目的とした研究は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う大学の立ち入り制限等の影響により、実験環境が十分に確保できなかったため、今後の継続した検討が必要であるものの、超音波剪断波エラストグラフィを用いた股関節内転筋群の受動張力変化の妥当性検証や、長内転筋の活動張力変化の推定が検討する実験については、ほぼ予定通り遂行できているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、超音波剪断波エラストグラフィを用いて、ヒト生体を対象とし、股関節回旋に伴う股関節内転筋群の受動張力および活動張力を推定し、股関節内転筋群の機械特性の解明に取り組むことを予定している。また、股関節内転筋群の形態特性を解明するため、屍体を用いた研究の実施を予定している。
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Research Products
(4 results)