2020 Fiscal Year Annual Research Report
インピーダンス分光を用いた誘電体内の高精度ナノ欠陥解析手法と制御プロセスの開発
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20J15696
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久山 智弘 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 欠陥 / プラズマプロセス / 絶縁膜 / インピーダンス分光 / シリコン窒化膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、欠陥の周波数応答を測定する「インピーダンス分光法」の計測系構築と解析用等価回路モデルの理論検討を進めた。まず、プラズマプロセスで形成される欠陥(プラズマ誘起欠陥:PID)を含む絶縁膜の初期特性を表現する等価回路モデルを構築した。具体的には、PIDを含む絶縁膜の電気伝導特性を梯子状RC回路モデルで表現した。絶縁膜中の欠陥準位に依存する時定数は、Yuanらのモデルを参考にRC回路の時定数で表現した。構築した等価回路モデルを用いて、各種プラズマに曝露したSi基板上シリコン窒化膜(SiN膜)の複素インピーダンスの周波数依存性を解析した。その結果、絶縁膜中の特に半導体界面近傍に形成されるPIDの欠陥量・エネルギー準位が、プロセス条件により異なることが分かった。 さらに上記のインピーダンス分光法を絶縁膜の長期信頼性解析に応用展開した。自作の自動測定プログラムで計測器を制御し、連続的なストレス印加下でインピーダンス分光測定が可能な測定系を構築した。本手法を、経時的インピーダンス分光解析法(Time-dependent impedance spectroscopy: TDIS法)と定義した。半導体回路内で用いられる代表的な絶縁膜材料(シリコン酸化膜、SiN膜、高誘電率膜(High-k膜))にTDIS法を適用した結果、薄膜によって異なる絶縁破壊現象を特徴づけるインピーダンススペクトルを計測した。実験データを基に絶縁体薄膜中の欠陥(フィラメント)形成モデルに基づく新しい等価回路モデルを提案し、膜中の欠陥形成機構が絶縁破壊状態に対応する複数の等価回路モデルで記述できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、半導体回路の主要構成材料(半導体・絶縁体)に形成されるPIDの解析に必要な等価回路モデルの構築を完了した。半導体Si基板内のPID解析には、Nicollianらが提案したRC等価回路モデルを用いた。絶縁体中に存在するPIDの特徴は、梯子状のRC回路モデルで表現した。さらに、インピーダンス分光法をPIDの初期特性評価手法から当初の計画以上に発展させ、絶縁体薄膜材料の複素インピーダンスに注目した長期信頼性評価手法(TDIS法)に応用展開した。TDIS法に関する研究内容は、電子デバイス信頼性物理に関するトップカンファレンス(IEEE International Reliability Physics Symposium: IRPS2021)に口頭発表として採択された。以上の進捗状況を鑑みて、「当初の計画以上に進展している。」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で構築した等価回路モデルとインピーダンス分光計測系を用いて、温度制御型TDIS法で得られるインピーダンススペクトルを解析する。2020年度に準備したマスクを用いて絶縁膜表面に金属電極を形成し、学内共用設備にある温度制御可能な電気伝導特性測定装置を用いた実験を行う。共用設備の計測器を制御する自動測定(Labview)プログラムは構築済みである。信頼性試験を想定したストレス印加下のSiN膜を対象として、-80℃以下で計測されるトンネル過程の時定数から欠陥の空間分布を、100℃以上で計測される熱電子放出過程の時定数から欠陥のエネルギー準位を経時的に解析する。 また、マイクロ波照射アニール(MWA)と急速加熱処理によるPID回復効果の比較評価を行い、照射するマイクロ波と帯電した欠陥の共鳴現象に起因する局所選択的エネルギー伝送を利用した欠陥回復プロセスを実証する。上記に加えて、低誘電率膜(low-k膜)等の有機材料膜中の欠陥回復を試みる。実験に使用するlow-k膜は2020年度中に選定し、確保した。low-k膜では、プラズマプロセス起因の欠陥の電気双極子モーメントに加え、分子の分極構造と、空孔構造が膜内部に混在する。low-k膜とSiN膜に対するMWAの効果を比較することで、膜中の分極構造の違いがMWAによる欠陥回復効果に与える影響を明らかにする。さらに、MWAによる欠陥回復過程の解析にインピーダンス分光法を応用し、インピーダンス分光法が広く先端絶縁体技術に適用可能であることを実証する予定である。
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