2020 Fiscal Year Annual Research Report
高力ボルト引張接合を汎用化するための設計手法の開発
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20J15702
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
杉本 悠真 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2022-03-31
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Keywords | 高力ボルトエンドプレート接合 / 引張接合継手 / 非突出型接合 / ボルト軸力推定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で対象としている高力ボルト非突出型エンドプレート接合(以下,非突出型接合)は,使用するボルト本数が削減できるというメリットから需要が高まっているが,設計で重要となる「ボルト軸力の推定法」が確立されていないという課題がある.この課題を解決するために本研究では汎用的な非突出型接合のボルト軸力推定法の確立に取り組んでいる.非突出型接合のボルト軸力推定を困難としているのは,「①非突出型接合の構造要素の一つである片側引張接合のボルト軸力(てこ反力)推定式が確立していないこと」,「②接合部に伝達する作用力が曲げモーメントの増加に伴い非線形に変化すること」の2点にあると考え,これら2点を明らかにする方針で研究を進めている. 2020年度前半は「①片側引張接合のてこ反力挙動」と「②曲げモーメント増分に対する被接合部引張力の非線形挙動」について,FEM解析を用いてその力学挙動を明らかにし,①と②の挙動を非突出型接合の構造パラメータで定量化ならびに定式化することに成功した.また,提案した①,②の挙動に関する推定式の組み合わせにより非突出型接合のボルト軸力推定法を提案した.この提案したボルト軸力推定法は,従来再現が難しかった非線形的なボルト軸力増加を再現できており,設計で重要なボルト降伏時の荷重を15~25%安全側に推定できることを示した. 2020年度後半は,FEM解析により提案した設計法の妥当性を検証するために,非突出型接合の実大実験を実施した.実験の結果,接合面の溶接変形がボルト軸力増分に与える影響が顕著であり,製作誤差がボルト軸力増分に与える影響について追加検討が必要であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度前半はFEM解析を中心とした検討を行い,非突出型接合のボルト軸力推定法の実現可能性を提示することができた.しかし,2020年度後半に実施した非突出型接合の実大実験において,接合面の溶接変形がボルト軸力増分に与える影響が顕著であることが明らかとなり,製作誤差に対する追加検討を進めている.このため,次の段階の要素継手の静的載荷試験の計画立案・実施に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,まず2020年度から継続して実施している「接合部を有するH形鋼の曲げ載荷実験」の残りを実施し,FEM解析で提案した非突出型エンドプレート接合の簡易設計法が現実に適用できるかを実験結果からも検証する.実験において,エンドプレート接合の接合面の初期不整が実験結果(特にボルト軸力増分)に大きく影響することが明らかとなった.このため,接合面初期不整に対する安全率の設定についても追加で検討する.具体的な検討方法について,溶接熱による鋼板変形を再現できるFEモデルを作成し,溶接順と熱量を変化させたパラメトリック解析を実施し,鋼板変形量・変形分布と溶接順・熱量の関係を明らかにする.その後,鋼板変形量・変形分布と接合部耐力の関係を定量化し,安全率を設定する. 2021年度後半は,前年度にFEM解析で提案した接合構造要素が全体接合のボルト軸力増分を再現できるかを静的載荷実験からも検証する.検証にあたり,偏心曲げに影響を与える試験体長さなどを変化させた7体の要素試験を実施し,計測される偏心曲げ応力,エンドプレートの曲げ応力,ボルト軸力を全体接合の実験結果と比較する. 最後に,2020年度の研究成果も含めた2年間の成果から,非突出型エンドプレート接合の簡易設計法を構築する.
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