2020 Fiscal Year Annual Research Report
Health and Family Economics -Economic Analyses on Intra-Household Resource Allocations and Decision Making-
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20J20017
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金子 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 労働経済学 / 家族の経済学 / 人的資本 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、研究実施計画に記載した以下2つの研究を遂行した。 (1)厚生労働省より提供を受けた21世紀出生児縦断調査を用いた研究。具体的には東日本大震災の経験が親と子の時間配分(親:労働時間、子どもと過ごす時間、子:勉強時間など)にどのような影響を与えるかを検証した。本研究ではおもに、上述のアウトカムに与えた効果を検証することで、震災の経験により子どもの人的資本への投資は親、子ども本人とも増えたことが明らかになった。子どもが自然災害や健康上のショックを被ったときに、親がどのような対応をするかという点については関連分野の先行研究がいくつかある一方で、子ども自身がどのように反応するかという点については我々のサーベイする限りでは先行研究が存在せず、この点で研究の重要性は大きい。本研究は論文執筆を一通り終え、国際英文誌で査読中である。 (2)北海道伊達市より提供を受けた教育データ(市の公立小中学校に通学する子どものテストの成績や家計の情報を含む)を利用し、テスト成績において年上の兄弟から年下の兄弟に対してスピルオーバー効果があるかどうかを検証した。兄弟関係は子どもにとって質的にも量的にも重要な相互作用であるにもかかわらず、上述の点に着目した研究はかなり少ない。少なくとも日本のデータを用いて取り組む研究はこれが初めてであり、意義も大きいと考えられる。得られた結果として、兄弟間の学力の波及効果は年上→年下、年下→年上の兄弟とも有意であり、教育政策などの効果検証をする際に、この波及効果も考慮することの重要性が示唆された。本研究は論文執筆を一通り終え、国際英文誌で査読中である。 以上二つの研究は、【研究の目的】に記載した、自然災害などの外生的なショックが起きた時の家計構成員への影響、および家計内における資源配分や相互作用のありようを追求するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要において概説した二つの研究について分析、論文執筆、学術誌への投稿作業が完了していることから、研究の進展はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した研究は、いずれも論文の第一稿の執筆が既に完了しており、現在海外査読誌に投稿中である。具体的には、2021年4月22日現在、東日本大震災をテーマとした研究はEconomica誌で、兄弟間の波及効果についての研究はEconomics of Education Review誌でそれぞれ査読を受けている。 そのため本年度は、以上の研究についての学会発表や査読後の修正作業などが主な作業内容になる。 これらの研究に一定の目処が立った段階で、新たな研究テーマに着手することを考えている。この研究テーマについての詳細は定まっていないものの、受入研究者を研究代表者とする厚生労働科学研究費補助金プロジェクトの研究の一部として二次利用申請されたデータを使用する可能性が高い。 令和2年度に進行した研究が学術誌に採択された際には、その論文を博士論文の1つの章として執筆、編集することも視野に入れて研究を進める。
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