2021 Fiscal Year Annual Research Report
ICT-based System for Large-scale and Global Japanese Language Education
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20J20043
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
片岡 友香 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語・外国語教育 / 日本語教育 / スピーキング指導 / 口頭訂正フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に、第二言語・外国語のスピーキング指導において、学生による発話の機会とフィードバックは十分に提供できていない。教師に対して大人数の学生がいる大規模クラスでは、時間的制約により、個別の発話指導は極めて困難である。学生の発話の誤用に対して教師が行う口頭訂正フィードバックの研究においても、教室時間内だけでは学生自らのエラー修正に至らない問題があった。本研究では、海外大学における100名を超える大規模な日本語授業において、本提案システム「ORP Gym」上で音声録音を伴うスピーキング試験を介して、発話の機会とフィードバック数を増やし、学生による発話の正確さを向上させることを目的とした。
今年度の実験では、以前からの課題であった、ORP Gym上でオンラインの音声評価者からのテキストフィードバックについて厳密な効果検証をするために、インド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)の大規模な日本語のスピーキング授業内で、68名の実験参加者を対象に制御実験を実施した。実験に先立ち、慶應義塾内およびIIT-H内の倫理申請手続きを行い、7月に承認を得た。その後、8月 - 9月にIIT-Hの日本語授業内で履修者285名中、100名の実験参加者を募集し、6週間の制御実験を実施した。実験終了後、途中辞退者32名を除いた結果、68名の実験参加者(実験群: 37名、制御群: 31名)に対して実験を実施したこととなった。
統計的な検定の結果、実験群の方が制御群に比べて、空欄穴埋め問題におけるスピーキング試験のスコアが顕著に高いことが分かった。また、実験群の高いスコアに影響を与えた要因が、文法エラーの改善であることが分かった。本結果により、個別の発話指導において、教師によるテキストフィードバックを提供する本システムを授業時間外に活用することで、学習者の文法エラー改善に役立つことが証明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度(R2)の実験では、ORP Gymの構築と導入実験に焦点を当てて、システム上の学生の行動パターンを分析することに取り組んできた。しかし、これまでは制御実験を実施していなかったことから、行動パターンで分類したグループ間の人数が顕著に偏ってしまう結果となった。迅速なフィードバックとして、模範解答のみを積極的に利用した学生グループに属する学生の人数が多い一方で、遅延フィードバックである「音声評価者からのテキストフィードバック」を利用した学生グループに属する学生の人数が少なく、その統計的なサンプルサイズの少なさから厳密なフィードバックの効果測定ができていなかった。
そのため、今年度の本研究では、ORP Gymで提供するフィードバックである「音声評価者からのテキストフィードバック」の効果を厳密に測定することに焦点を絞り、制御実験を実施した。当初募集し、実験を提供した100名の中から、途中辞退は32名であったが、本結果は、実験前に算出した検定力分析に基づいたサンプルサイズとの比較や、事後検定の結果を考慮しても、統計的な検定に妥当なサンプルサイズを得ることができたといえる。
現在は、取得したデータを統計的な検定等を用いて、フィードバックの効果を分析しながら論文を執筆し、論文誌への投稿を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究をもって、「教師が手動で生成するフィードバック (Computer-mediated Feedback, CMF)」効果の調査は、一部の追試が必要な部分もあるが、当初の目標を達成した。今後は、さらにCMFの発展型である「コンピュータが生成するフィードバック (Computer-generated Feedback, CGF)」の効果測定に取り組む。今後の研究推進方策には、1) CGFありとCGFなしグループに分けた制御実験を1学期以上の長期間で実施すること (仮説の検証や一般化に向けて、クロスオーバー試験等の実施方法も検討すること)、2) より迅速なCGFを実現するために、音読問題に特化してAIを活用した発音の自動採点・指導プログラムを構築・評価・導入することの2つを推進していく。 本研究によって、CMFおよびCGFと学習者である日本語初学者の発話向上の関係が明らかになり、大規模クラスのためのCMFやCGFを取り入れた授業カリキュラムのデザインや、特定の発話エラーの向上に特化したより重点的な指導や個別のサポートが可能となる。
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Remarks |
Best Presentation Award, 15th Asia Pacific Generation (APNG) Camp (Feb 26th, 2022)
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