2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J20055
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤池 広都 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | ファイバー曲面 / 相対不変量 / スロープ / 代数曲面 / ファイバー空間 / 自己同型群 / 分岐被覆 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイバー曲面の地誌学的研究による応用として、ファイバーを保つ自己同型群の位数の評価に関する研究を行った。位数の評価を与えたファイバー曲面は、大きく分けて次の二種類である。 一つ目は、線織面の巡回被覆の構造を持つファイバー曲面である。本研究は、昨年度からの引き継ぎである。先行研究により、超楕円曲線束の自己同型群の位数の上限が知られていた。超楕円曲線束は、線織面の2重被覆に他ならない。被覆の自己同型群は、線織面の自己同型を引き起こす。線織面の自己同型群による分岐跡の特異点への作用を解析することで、群の位数と相対不変量の間に関係式を作ることができる。昨年度の時点で、位数に関する評価はある程度得られていた。本年度はより精度の高い評価を与えるため、評価を出す上で必要になる様々な議論を根本的なところから練り直した。これにより議論の精度と見通しが良くなり、少しではあるが評価の精度を上げることができた。 二つ目は、楕円曲面の巡回被覆の構造を持つファイバー曲面である。これは本年度より取り組み始め、現在も続行中である。一つ目と同様に、被覆の自己同型は楕円曲面の自己同型を誘導する。一つ目との大きな違いは、楕円曲面には特異ファイバーが存在することである。誘導された楕円曲面の自己同型が、特異ファイバーにどのように作用しているのかを解析する必要があった。そこでMordell-Weil群と小平ネロンモデルのアイデアを用いることで、作用を解析することができた。現時点では(被覆)ファイバー曲面が半安定という仮定の下で、位数の評価を与えることができている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ファイバー曲面の地詩学的研究の応用として、ある種のファイバー曲面に対してファイバーを保つ自己同型群の位数の評価を与えることができた。この研究を通して、全空間の自己同型を特異ファイバーの自己同型に帰着させるプロセスをよく理解できた。従って、ファイバー多様体の自己同型群の位数の評価を与えるための手掛かりを得られた。 3次元ファイバー多様体のスロープ不等式に関しては、あまり進捗がなかった。従来の方針が進展しなかったため一旦保留して、また別の戦略を模索した。
|
Strategy for Future Research Activity |
楕円曲面の巡回被覆の構造を持つファイバー曲面に関して、半安定という仮定を外した上で、自己同型群の位数の評価を与えることを目指す。 有理曲面束の巡回被覆の構造を持つ3次元ファイバー多様体のスロープ不等式の確立を目指す。従来の方針を変え、相対標準層のHarder-Narasimhanフィルトレーションのテクニックを用いる。相対標準層に関する掛け算写像のランク評価を被覆次数で与えて、スロープの下限を、被覆次数やファイバーの不変量による関数で与えることを目指す。
|