2020 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍増悪因子NRF3によるアミノ酸取り込みを介したがん免疫系抑制機構の解明
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20J20194
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
廣瀬 修平 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | NRF3 / SLC1A4 / アミノ酸 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「NRF3が腫瘍周辺のアミノ酸独占を促進することでT細胞を疲弊させ、がんを増悪させる」と仮説を立てている。当該年度は、「①NRF3が取り込みを制御するアミノ酸の同定」および「②アミノ酸の変動とNRF3活性化の関連の解明」を計画していたが、「③マウスを用いたin vivo解析」も先立って行った。 ①に関して、初めにNRF3はアミノ酸欠乏に応答してアミノ酸トランスポーターSLC1A4を誘導することを明らかにした。SLC1A4はアラニン、セリン、システイン、スレオニンを取り込むトランスポーターであることから、NRF3はこれらのアミノ酸の取り込みを制御することが示唆される。加えて、SLC1A4がmTORC1活性化に不可欠であることを発見した。SLC1A4がmTORC1活性化に寄与するという報告はなく、新しい発見である。加えて、研究計画には記載していなかったメタボローム解析を行い、NRF3はプリン塩基の合成を促進することを見出した。これと一致してNRF3はプリン塩基の合成に関わる遺伝子の発現を制御することも見出している。 ②に関して、各アミノ酸欠乏培地でHCT116細胞を培養し、セリン、グリシン、システイン欠乏培地でNRF3が強く活性化することを見出した。しかし、各アミノ酸欠乏培地を新しいものに変更すると、活性化が消失してしまうという問題が発生している。そこで、全アミノ酸欠乏培地に切り替えたところNRF3タンパク質は分解されてしまったので、NRF3安定発現細胞を用いた。その結果、全アミノ酸欠乏によってNRF3が活性化する傾向は見られたものの、十分な活性化とは言えない。 ③に関して、解析に必要なNRF3ノックダウン/過剰発現細胞の樹立やT細胞解析系の立ち上げといった準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「アミノ酸の変動とNRF3活性化の関連の解明」関して、遅れていると感じている。上述したように一度はNRF3の活性化を強く示唆する結果を得たものの、再現性がない。対応策を講じたが、以前ほど顕著な結果は得られていないのが現状である。一方で、「NRF3が取り込みを制御するアミノ酸の同定」および「マウスを用いたin vivo解析」は概ね順調であると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
「NRF3が取り込みを制御するアミノ酸の同定」に関して、SLC1A4によるアミノ酸取り込み量および、プリン塩基合成量を測定する計画である。「アミノ酸の変動とNRF3活性化の関連の解明」に関しては、アミノ酸欠乏によるNRF3活性化の再現が得られていない。そこで、NRF3が活性化するアミノ酸欠乏培地と活性化しない培地で成分分析を行い、原因物質を同定する。「マウスを用いたin vivo解析」に関して、マウスに移植するNRF3ノックダウン/過剰発現細胞の樹立および解析系の立ち上げが完了している。今後、マウスに移植し、NRF3によるアミノ酸独占と免疫細胞の関連を明らかにしていく。
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