2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of differences between human and great apes revealed by structures of chromosome ends
Project/Area Number |
20J20222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大泉 祐介 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 染色体 / 大型類人猿 / 進化 / ヒト科 / テロメア |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトとチンパンジーは進化的に最も近いとされているが、様々な性質の違いがある。興味深いことに、大型類人猿に属するチンパンジー、ボノボ、ゴリラのテロメアの近傍には、Subterminal Satellite (StSat) と呼ばれる32 bp単位の大規模な繰り返し配列が存在するが、ヒトには全く存在しない。このことから、StSat領域の有無がヒトと大型類人猿の性質を分けた原因の一つになっている可能性が考えられる。そこで本研究では、StSat領域の分子機能を探ることにより、ヒトとチンパンジーの進化の一端を明らかにすることを目的とした。 まず、StSat領域における染色体構造を明らかにするため、StSat DNAに特異的に結合するタンパク質の同定を行った。その結果、候補タンパク質としてメチル化DNA結合タンパク質であるMECP2が同定された。そこで、メチル化DNA免疫沈降法を用いてStSat領域におけるDNAのメチル化の局在を調べた結果、StSat領域のDNAはメチル化されていることがわかった。DNAのメチル化はヘテロクロマチン形成に関与し、これまでの実験からStSat領域はヘテロクロマチン形成に関与するヒストン修飾が局在していることがわかっているため、StSat領域はヘテロクロマチン構造を形成しており、周辺に存在する遺伝子の転写抑制を行っている可能性が考えられた。 次に、in vivoにおいてStSat領域特異的に存在するタンパク質を網羅的に同定できるPICh法を行った。まず、チンパンジーの培養細胞を用いてテロメアに対するPICh法を行い実験系の評価を行った。精製したタンパク質を質量分析によって同定した結果、TRF2やRAP1などのテロメア関連タンパク質を同定することができた。このことから、テロメア特異的なタンパク質の分離・精製が行えたことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定通りStSat領域の詳細な染色体構造を明らかにすることができている。 一方で、PICh法を用いたStSat領域に存在するタンパク質の網羅的解析について、タンパク質の抽出方法や精製方法など実験条件の最適化が必要であることが判明したためやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、StSat領域に対するPIChの条件の最適化を行い、StSat領域特異的に結合するタンパク質を同定する。そして、同定したタンパク質の細胞内機能を解析する。 さらに、チンパンジーにおけるStSat配列に隣接するDNA配列を同定し、StSat配列による影響(染色体構造、隣接領域内の遺伝子発現など)があるか解析を行う。
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