2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J20248
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村井 開 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ビッグバン元素合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、数値計算を用いたビッグバン元素合成についての研究を行った。 ビッグバン元素合成が行われる時期に、150-450 MeVの静止質量を持ったステライルニュートリノが崩壊するシナリオについてビッグバン元素合成の数値計算を行うことで、従来は制限が与えられていなかったパラメータ領域に新たな制限を与えた。また、観測との矛盾が生じないパラメータ領域について、相対論的な粒子のエネルギー密度が増加することを定量的に示し、今回考えたようなステライルニュートリノがハッブル定数の観測における不一致を緩和する可能性を指摘した。 非相対論的粒子の崩壊から生じた高エネルギー光子によって、ビッグバン元素合成で生成された軽元素が分解され、結果としてビッグバン元素合成の予言が変わる可能性を調べた。この研究では、粒子崩壊によって放出される総エネルギーが従来調べられていたよりも小さい場合に注目しており、光子のスペクトルを注意深く調べることが必要であった。その一環として、終状態放射と呼ばれる過程についての一般的な光子のエネルギー分布を導出した。ビッグバン元素合成の解析結果としては、崩壊粒子の寿命とエネルギー密度に対する制限を各軽元素について得た。またこのシナリオについて、リチウムの原始存在量の理論と観測の間での不一致を解決する可能性についても議論し、粒子崩壊から直接光子が放出される場合について、ベリリウムが効率的に光分解されることでリチウムを含めた軽元素の生成量が観測と無矛盾になりうることを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビッグバン元素合成の数値計算を行うことで、複数の模型に対してモデルパラメータへの制限を与え、さらに他の宇宙論的課題への示唆を得ることができた。 新型コロナウイルス感染症の影響で、外部での研究発表の機会は少なかったが、それを補うだけの研究成果を発表できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビッグバン元素合成に関する研究を続けるとともにCMBなどその他の宇宙論的観測の知見を取り入れ、研究計画に従って宇宙論的課題を複合的・統一的に考察することを目指す。
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