2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J20248
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村井 開 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | ビッグバン元素合成 / ヘリウム / レプトン非対称性 / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ビッグバン元素合成に関連して、金属量の極めて少ない銀河の観測から初期宇宙におけるヘリウム4存在量の推定を行う論文を発表した。またその結果に着目し、観測的制限を満たしながら初期宇宙においてレプトン非対称性を生成する模型を調べた。新たな銀河の測定により、初期宇宙に存在したと考えられるヘリウム4存在量の推定値は従来の値よりも小さな値となった。ヘリウム4はビッグバン元素合成によって宇宙初期に生成されたと考えられており、その生成量は初期宇宙の環境に依存する。今回推定されたヘリウム4の存在量からは、初期宇宙においてニュートリノが反ニュートリノと比較して多く存在した、つまりレプトン非対称性が存在した可能性が示唆されているが、ヘリウム4の存在量を説明するために必要なレプトン非対称性の量は宇宙のバリオン非対称性に比べて極めて大きく、通常考えられるレプトン非対称性生成模型では不十分である。そこで、我々はAffleck-Dine機構という初期宇宙においてバリオン/レプトン非対称性を生成する模型をもとに、Q-ballという非対称性を閉じ込める役割を果たす局所的な物体の時間発展を評価することによって、バリオンの非対称性を過剰生成せずにレプトン非対称性を生成しうるシナリオの存在を確認した。 また、インフレーション中におけるアクシオンと非可換ゲージ場についての研究も行った。これらの模型で生成される原始重力波は、インフレーション中の量子ゆらぎに由来するものよりも大きな振幅を持ち、かつカイラリティや非ガウス性、スケール依存性といった特徴を持つことが知られている。このような重力波の特徴のうち、四点相関を調べるとともに、模型の拡張を考えることで将来の観測・実験における模型の検証可能性や従来の模型における予言の一般性について議論した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測実験のグループとの共同研究により、ビッグバン元素合成において重要であるヘリウム4の存在量を新たに推定することができた。 また、インフレーション中に生成される原始重力波について、これまでよりも高次の統計量を計算しすることができた。さらに、従来の模型の拡張を議論することで、先行研究の予言の一般性を確かめるとともに、インフレーション中のゲージ場の振る舞いについて理解を深めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでのビッグバン元素合成に関する研究を継続するとともに、原始重力波やCMBといった他の現象にも目を向けることで、これまでに提案されてきた模型の検証可能性を議論する。また、宇宙論における諸問題を解決しうる新たな模型の構築を目指す。
|