2021 Fiscal Year Annual Research Report
モジュラー関数のサイクル積分と実二次体の数論との関係について
Project/Area Number |
20J20308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 友哉 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | モジュラー関数 / サイクル積分 / モジュラー曲線 / 量子不変量 / 量子モジュラー形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2件の論文発表と6件の研究発表(うち2件は国際会議における英語発表)を行った。いずれも、今年度得られた2件の研究成果について発表した。また15件以上の研究集会に参加し、関連分野の最先端の研究について見聞を深めた。 今年度に得られた1件目の研究成果は、昨年度に引き続けて行ったモジュラー関数のサイクル積分に関する研究である。これは虚二次体に関する特異モジュライの実二次類似物としての役割が期待されている対象であるが、特異モジュライの定義に用いられるj関数は正則関数であるのに対し、サイクル積分が性質の良い多様体上の性質の良い写像になるかどうかについては現状知られておらず、このことが研究を困難にしている。これまでに私は、実二次無理数に対してのみ定義されていたサイクル積分を不良近似数と呼ばれるクラスの実数に対しても定義しその連続性について調べていたが、今年度は無限語の組合せ論において重要な対象であるThue-Morse語に関する連続性について結果を得ることができた。またこれまでに得た結果を論文にまとめて発表した。 2件目の研究成果は、東北大学の森祥仁氏との共同研究である量子不変量の量子モジュラー性についてである。我々の研究の動機は、3次元実多様体の量子不変量であるWitten-Reshetikhin-Turaev (WRT) 不変量に関するWittenの漸近展開予想を解決することにある。この予想を解決するにはWRT不変量の量子モジュラー性を示すことが有効であるが、我々は今回この性質が知られていなかったクラスの多様体がこの性質を持つことを証明した。この研究の主結果はホモロジカルブロックというq級数不変量について、そのqの1の冪根への極限がWRT不変量となることを示すことによりWRT不変量の量子モジュラー性が帰結されるというものである。以上の結果について論文にまとめ、研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
モジュラー関数のサイクル積分については、無限語の組合せ論との関わりについて研究を深めた結果、当初の予想を超えて組合せ論で重要な対象であるThue-Morse語に関する結果を得ることができたため。またそれだけでなく量子モジュラー形式についても3次元多様体の不変量について研究成果をあげることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に研究を開始したHilbert-Eisenstein級数と双曲的Eisenstein級数の関係について研究を推し進める。また、サイクル積分の連続性と語の組合せ論について更に深い関係を探っていく。
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