2021 Fiscal Year Annual Research Report
無機化合物における量子臨界点近傍の物性および新奇遍歴電子状態の探索
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20J20353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森山 広大 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 超伝導 / 磁気抵抗効果 / 構造相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、比熱や電気抵抗などの物性測定やX線回折測定などからA3Co4Sn13の構造相転移と超伝導との関連を明らかにし、量子臨界点近傍での特殊な挙動を見出すこと、およびそれらと異常な磁気抵抗効果との関連やそれに付随する特異な現象の解明を目指していた。本年度は磁気抵抗測定に使用する磁場発生装置が故障のため使用できなかったが、昨年度までの測定データについて詳細な解析を行い、フェルミ準位とディラック点とのエネルギーギャップを推定しバンド計算の結果と比較することで、異常磁気抵抗へのディラック電子の寄与を確かめることができた。これは本研究における仮説を裏付ける重要な結果と考えられる。 また、関連物質である(Ca1-xSrx)3Rh4Sn13の単結晶合成に成功し、香港中文大学のSwee K. Goh教授との共同研究により構造相転移の量子臨界点近傍での超伝導臨界電流密度の異常を発見した。この結果は、本系の構造の不安定性と超伝導との強い結びつきを示唆するものであり、さらなる研究の発展を促すものと考えられる。 さらに、量子臨界近傍のCo化合物として新たにSrCo2(PxGe1-x)2の単結晶合成にも成功し、磁化や比熱の結果から、x=0.39, 0.58のそれぞれにおいて量子臨界的挙動が見られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の影響で出張などの活動が制限され、学外での実験を行うことが困難であった。また、磁気抵抗測定に使用する磁場発生装置が故障し、復旧にほとんどの時間を費やすこととなった。一方で、当初予定していなかった(Ca1-xSrx)3Rh4Sn13の結晶合成に成功し臨界電流密度の異常を新たに発見したり、新たに層状遍歴電子強磁性体SrCo2(PxGe1-x)2の単結晶合成に成功し量子臨界的挙動を発見するなど、さらなる研究の発展を促すことができたことは重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
磁場発生装置の復旧が見込まれるため、昨年度に合成した固溶系の試料について磁気抵抗測定を進め、ディラック電子のエネルギーと磁気抵抗との関連を調べるほか、SdH振動の検出も目指す。(Ca1-xSrx)3Co4Sn13については比熱測定等から構造相転移による異常が現れないか確かめ、超伝導転移との関わりも詳細に調べたい。派生研究として、固体NMR測定を用いたSrCo2(PxGe1-x)2の量子臨界近傍の強磁性ゆらぎの解析なども行いたい。
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