2021 Fiscal Year Annual Research Report
アクティブファイバー標的で拓くS = -2ハイパー核の精密分光
Project/Area Number |
20J20381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原田 健志 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ハイパー核 / マルチストレンジネス / J-PARC / 欠損質量分光 / Ξハイパー核 / 実験核物理 / ストレンジネス核物理 / 反応分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、J-PARC K1.8ビームラインエリアにおいて、(K-, K+)反応を用いてストレンジネス量子数 S = -2を持つグザイハイパー核を生成し、そのエネルギー準位を測定する。本年度は、2022年度末のビームタイムに向け、飛跡検出器及び粒子識別検出器の調整、散乱粒子用磁気スペクトロメーター"S-2S"の設置並びにアクティブファイバー標的(AFT)のシミュレーション開発を行った。 飛跡検出器には、従来よりK1.8ビームラインエリアにおいて運用していた1台に加え、長期保管していた2台を使用する。この2台についての動作安定性の確認試験を行い、運用可能な状態に回復した。本実験で使用する飛跡検出器には、既存の信号読み出しシステムとは異なる、検出器の間近で信号をデジタル化処理して読み出す方法を用いる。新システムによる読み出しが運用可能であり、かつ従来手法よりもノイズを低減できることを確認した。粒子識別検出器のTOF及び水チェレンコフ検出器については、フレーム組み立て及び宇宙線を使った信号読み出し試験を行った。エアロゲルチェレンコフ検出器については、散乱粒子の通過領域を覆うようにエアロゲルの再配置を行った。 本実験には、新規建設した磁気スペクトロメーター"S-2S"を使用する。S-2Sは四重極電磁石2台(Q1, 2)と偏向電磁石1台(D1)からなる電磁石系である。これまでK1.8ビームラインエリアにて設置、運用されていたKURAMA電磁石の撤去作業を行い、本年度末にはS-2S電磁石系の設置を完了した。 前年度に発見した、VME-EASIROCモジュールの信号整形に起因するAFTのエネルギー分解能悪化について、シミュレーションを用いた定量的な評価を行った。スペクトロメーターの運動量分解能に比べればその効果が小さいこと、時間情報を使うことによりこの効果を最小限に抑えられることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
飛跡検出器及び粒子識別検出器の調整並びに散乱粒子用磁気スペクトロメーター"S-2S"の設置作業は、当初の予定通り概ね順調に進行した。アクティブファイバー標的については、シミュレーションを用いたエネルギー分解能の評価に時間を要したこと、使用するシンチレーションファイバーの発注が遅れたこと等の要因により、現段階では実機製作には至っておらず、計画に遅れが見られる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のグザイハイパー核分光実験(J-PARC E70実験)は、2022年度末にビームタイムを予定している。次年度はまず、アクティブファイバー標的の実機製作に着手する。本年度のシミュレーション結果をもとに、3mm径のシンチレーションファイバーを使用した実機のデザインを行い、ジグフレームの発注、組み立て及び信号読み出し試験を完了する。また、これと並行して、本実験で使用する飛跡検出器及び粒子識別検出器の設置、配線並びに信号読み出し試験を行う。これら検出器について、2022年11月中にコミッショニングビーム前の調整を完了し、ビームを受ける。目標とするエネルギー分解能達成に向け、取得したコミッショニングデータをもとに検討を行い、物理データ取得前の最終調整を行う。
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Research Products
(6 results)